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認知症になったらどうすればいいの?放っておいて大丈夫?認知症対策を教えます!

認知症になったらどうなるの?

認知症になったら相続が大変になる。

誰しもがこの言葉を、一度は聞いたことがあると思います。

何ができるの? 何ができないの? そういった疑問もお持ちになっていると思います。

今回は、認知症になるとなぜ相続が大変なのかお伝えいたします。

認知症とは?

一般的に認知症になった人は、物忘れ・理解力や判断能力の低下・集中力や作業能力の低下などの症状があらわれ、認知症がすすむにつれ記憶障害・運動障害などがあらわれはじめ、重度になると異常な行動が目立つようになります。

では、法律上は認知症になった人はどのような位置づけになるのでしょうか。

民法には、「意思能力」という言葉があります。

この「意思能力」とは、自ら行動した結果、どのような結果になりどのような法的責任が生じるかを正しく理解できる能力のことをいいます。

みなさんは
「犯罪を行う⇒警察に逮捕され法律に則り処罰される」
ということを理解できると思います。

一般的に認知症になると、この流れを理解するのが難しくなるといわれています。

医学上では少し違うかもしれませんが、裁判例では6~7歳の子ども以上がこの「意思能力」を有するとなっています。

認知症になると症状の進行具合により、「意思能力が不十分⇒著しく不十分⇒ない」と変わっていきます。

ただ、私たちは医者ではないため認知症の程度を判断できません。

そのため、認知症になった人は基本的には意思能力がない人として扱わせていただいています。

もし、軽度の認知症でしっかりコミュニケーションをとれる状態にあるので、遺言書を作成したい、生前贈与したいというお悩みがあれば、個別に内容を把握させていただき対応させていただきますのでご相談いただければと思います。

認知症になるとできないこと

ここから相続で大切なことです。

意思能力がなくなると、財産の処分・契約や贈与・遺言などは無効になります。

想像してください。

意思能力のない4歳ぐらいの幼稚園児があなたに不動産を売却すると言ってきたら真に受けますか?

その売買契約が有効だと思いますか?

ご両親が急いでやってきて、

「すいません、この子の言ってることは気にしないでください」

と言われて終わるのが関の山ですし、法律上も無効な契約です。

もし相手方を認知症だと知らずに売買しても、意思能力のない人の契約は「無効」のためその売買は成立しません。

様々な経費をかけ頑張って契約できたと思ったころに、

「意思能力のない人との契約だから無効です!」

って急に言われても困りますよね…。

また、認知症の人がわけもわからず契約書にサインして、財産を取り上げられてしまうおそれもあります。

認知症になった人は、このように他者と関る行為が大きく制限されます。

制限することで、認知症になった本人とその相手を保護しているのです。

ただ、この意思能力のない人が相続や生前の対策を関わっていく上では非常に足かせになります。

認知症になったら何に困る?放っておいて大丈夫?

認知症は、症状の程度によっては日常生活にそれほど支障がない方もおられます。

重度になると介護が必要になり、人によっては専門の施設への入棟を検討されるかもしれません。

日常生活において、認知症の人をフォローする人の肉体的にも精神的にも、そして金銭的にも大きな負担がかかりますが、その負担以外で何か困るか?というと、あまり困りません。

ただし、相続になると「意思能力がない」ことでの問題が一気に表出します。

生前は、ご自身の財産をどのように分けるか、相続税の負担をできるだけ減らすためにどのような対策を立てるか、が主な問題になります。

生前贈与や遺言書の作成、贈与税のかからない範囲での毎年の贈与、不動産の購入などが代表的な例です。

相続発生後は、相続財産の処理をすすめます。

遺産をどう分けるか協議をする、亡くなった人の銀行口座を解約する、不動産の名義を変更する、不動産を売却してお金に換えるなどを行っていきます。

これらは生前対策や相続を進めていく上で非常に重要な要素ですよね?

でも、認知症の人がこれらを行っても無効になるのです。

この制限こそが相続を考えていく上で、認知症になったときに難しい、面倒になるといわれる理由です。

さらに認知症になると、認知症になった人の財産が流出するのを防ぐため、銀行口座の利用に一定の制限がかかるようになります。

このように日常的には問題がないように思えても、何かあった時にその問題が一気にあふれ出します。

いま認知症になられていないご高齢の方、ご高齢のご両親や祖父母をもつ方は、この問題が発生するまで放置することはあまりおすすめしません。

後述しますが、認知症になってからでは余計な費用と手間がかかるからです。

はてな顔の年配女性

認知症になったときの対処法

自分が死んだときのために財産の相続方法を決めたり、相続税対策をしたい! でも、生前に認知症になったらどうなるの?

ご自身が亡くなるまでに遺言書を作成して、財産の分配方法を決めたい。

相続税がかかってしまうので、できるだけ相続税対策をしたい。

そう考えておられる方は多いかもしれません。

でも、先ほどお伝えしたように認知症になってしまうと、できることに制限がかかります。

もし認知症の傾向が出てきた方が相続税対策を進めたいのであれば、一度かかりつけ医にご相談いただきまして認知症かどうかの診断を受けて下さい。

認知症でなければ問題なく生前対策や相続行為を進めることができます。

認知症になったときは…

では生前に認知症になった場合はどうすればよいでしょうか?

法律は、こういうときにどうすればいいか対処法を決めています。

「成年後見制度」を利用することで、認知症の相続人が相続に係わっていけるようになります。

この「成年後見制度」という言葉をお聞きになられた方は多いかもしれません。

「成年後見制度」については、こちらに詳しく書いていますので、ぜひご一読いただければと思います。

ただし、この制度はメリットデメリットが両立する制度です。

・成年後見人または成年後見監督人になられる方への継続的な報酬が必要になる
・成年後見人は成年被後見人の財産を減らすような行為はできない・融通が利かない

認知症のご家族が周りにおられる方や、ご自身やご家族が認知症になるかもしれないと心配されている方はこの制度について調べられることをおすすめします。

不動産屋

遺言書を残すとき

認知症の方は遺言書を作成できません。

法律上では、15歳以上であれば遺言書は誰でも作成することができます。

15歳以上であれば、遺言が何か、自分が亡くなった時に財産をどう残すかを判断できるだろうということです。

遺言書の種類はいくつかありますが、代表的なものに自筆証書遺言公正証書遺言があります。

自筆証書遺言は、皆様が想像する遺言書です。

ご自身で誰に何の財産を残すか手書きして、保管しておく。

公正証書遺言は、証人2人以上同席のもと公証役場にいる公証人に遺言書を作成してもらいます。

どちらの遺言書を作成するにしても、自分が亡くなった時に財産をどう残すかを判断できる状態でなければいけないため、意思能力のない人は作成できないのです。

成年後見制度を利用しても遺言書を作成できません。

ただ、公正証書遺言であれば、コミュニケーションを問題なくとれる軽度の認知症の方なら有効な遺言書を作成できる可能性があります。

ただ、軽度の認知症の方が作成した公正証書遺言でも、相続財産について相続人の間で争いがあれば、遺言書の有効性を裁判で争われることもありますので、必ず専門家に相談の上で進めることが重要です。

生前贈与をするとき

では、生前贈与はどうでしょう?

生前に財産を譲るメリットは、相続税対策と所有者が確定することです。

この生前贈与も遺言書と同じく、認知症の方は行うことができません。

それなら、成年後見制度を利用して生前贈与ができないか。

そう思われる方もいるかもしれません。

成年後見制度で選ばれる成年後見人は、成年被後見人の財産を守る義務があり、財産を減らすようなことができません。

一方的に財産を人に譲る行為は、認知症の方の財産を減らす行為にあたります。譲り渡す対象が配偶者や子供でも相続税対策でも関係ありません。

生前に認知症になれば相続対策を行っていくことが難しいことであると理解いただけたかと思います。

頭を抱える

認知症と相続

認知症の人が亡くなったときはどうすればいいの?

実は、認知症の方が亡くなった場合は難しくありません。

認知症の方は、遺言書を残すことや生前対策ができないため、相続人の方々にかかる負担は少し重くなりますが、残った相続人の方々は意思能力を有していますので、相続人の方々だけで相続を進めてくことができます。

亡くなられた方の財産や負債はどこにどれだけあるのか?
残った財産を相続人で争いにならないようどのように分けるのか?
相続税は発生するか?
どう支払っていくか?

これらを話し合いながら進められます。

悩む男性

認知症の人が相続人になったらどうすればいいの?

認知症の相続人がいるときは

難しいのが相続人の中に認知症の方がいるときです。

法律で決まっている相続分通りに分けるのであれば問題は少し簡単になるのですが、相続財産を相続人の間で話し合って分けることは簡単にはできなくなります。

相続は相続人全員が協力して行う作業です。

その中の一人でも作業できない人がいると、それだけで相続が停滞してしまい前に進まなくなります。

遺産分割協議をするとき

認知症の相続人と遺産分割協議をする場合は「成年後見制度」を利用して、成年後見人が認知症の相続人の代わりに遺産分割協議に参加します。

ただし成年後見人は、合理的な理由がない限り、認知症の相続人の法定相続分以下の財産を取得することに対して承諾しません。

そのため、認知症の相続人の法定相続分に配慮した遺産分割協議になってしまいます。

注意いただきたいのは、同じ相続人が認知症の相続人の成年後見人となっている場合です。

たとえば父親が亡くなったとき、母親が認知症・子どもが母親の成年後見人になっているようなときです。

この場合、遺産分割協議において認知症の母親の利益を確保するべき子どもが、認知症の母親と相続財産を分け合う立場になります。

子どもが得をすれば母親が損する、母親が得すれば子どもが損する。

なので、子どもは母親の代理人として遺産分割協議に参加できません。

この状態を「利益相反」といいます。

「利益相反」状態になったときは、成年後見人を監督する立場にあたる成年後見監督人がいれば成年後見監督人が認知症の母親の代理人となり、成年後見監督人がいなければ成年後見人である子ども、または他の相続人などが家庭裁判所に「特別代理人」選任の申し立てをします。

特別代理人はそのときだけ認知症の相続人を代理する人です。

相続人ではない親族や司法書士などの専門家が選任されます。

銀行を解約するとき

認知症の相続人がいても、一般的には有効な遺言書や遺産分割協議書があれば問題なく銀行を解約して、相続人へ預貯金を振り込むことができます。

ただし、銀行によっては相続人全員の捺印が必要になります。

認知症の相続人による捺印も必要です。

その場合は、成年後見人による署名・捺印が必要になります。

生命保険金を受け取るとき

亡くなった方がかけていた生命保険の受取人が認知症の相続人だった場合、やはり成年後見制度の利用なくては保険金の請求と受取は難しいのが現状です。

保険会社によっては、保険金を受け取るための請求を「指定代理請求人」が代理することができます。

この指定代理請求人が代理で請求すれば保険金は指定していた受取人の口座に振り込まれます。

ただ、この指定代理請求人を利用するにあたって、保険会社により利用できる保険商品、請求できる条件、請求するための必要書類が異なってきますので注意が必要です。

不動産の名義変更や売却をするとき

不動産の名義変更は、法定相続分通りであれば相続人のうち一人だけで相続登記ができますが、その相続人のみ登記識別情報(いわゆる権利書)が発行され、他の相続人には発行されません。

不動産を共有している一人にのみ権利書が発行されると「どうして私には権利書が発行されないの?」と思われる方も出てきて、もめる原因になるので要注意です。

こういう事態を避けるため、法定相続分に基づいた相続登記であれ、特定の相続人が取得する相続登記であれ、不動産を取得する相続人全員による登記の申請が必要です。

司法書士に依頼するなら相続人全員の委任状への署名と捺印が必要になります。

相続人全員の委任状があることで、全員が権利書を取得できるようになります。

その際、成年後見人がいれば、その成年後見人が認知症の相続人に代わって委任状への署名、捺印を行います。

相続において、相続した不動産を処分する方法は3通りあります。

現物分割

【不動産を相続人で分ける方法】

共有名義で登記する、広い土地であれば分筆⇒相続人への名義変更という方法も取られます。

代金分割(換価分割)

【不動産を売却して、そのお金を相続人で分ける方法】

一人の相続人名義で相続登記をした方が登記の手間、売却の手間がかかりませんが、遺産分割協議書に代償分割の詳細を記載する必要があります。

価格賠償(代償分割)

【不動産を特定の相続人が取得させる代わりに、不動産を取得した相続人が他の相続人の取り分を金銭で支払う方法】

不動産を取得したい人がいる、かつその取得者に金銭的な余裕があるときにとられる方法です。

不動産を取得して、他の相続財産を取得しないことで遺産分割上の調整が行われることもあります。

不動産を売却するのであれば「代金分割(換価分割)」になります。

不動産を売却する前提として相続登記をするのであれば、認知症の相続人をさけ、相続人の中から一人を選んだ上で名義変更をしてください。

相続人全員の共有名義へ変更してしまうと、売却処理が煩雑になります。

認知症の相続人が売却してもその売買契約は無効になります。

成年後見人が売却するにしても、成年後見人は財産を減らす行為ができないため、不動産を売却するためには家庭裁判所の許可がないと売却できません。

このように相続における不動産の処理に認知症の相続人がからむとややこしくなるため、認知症の相続人がいるときは不動産を渡すのではなく、金銭を渡すように遺言書で残す、または遺産分割協議書で取り決めることが重要になります。

成年後見人制度について具体例を出しながらご説明いたします。

認知症になる前に…

認知症なったらどうなるかを書いてきました。

この記事を読まれたに方は、相続における認知症の大変さを再認識頂けたと思います。

認知症になったときに備えた対策方法をご紹介いたします。

最近、よく耳にする制度ではないかと思います。

遺言書の作成

相続における認知症対策として一般的なのは遺言書です。

認知症になる前にご自身の財産を誰にどう分けるかを遺言書としてしたためておけば、死後の相続人同士の争い対策にもなります。

ただし、生前に認知症なった場合のご自身の財産管理についての不安は残ります。

任意後見制度の利用

任意後見制度とは、認知症になる前にあらかじめ任意後見人となる人と契約し、認知症になったときなどに任意後見人に財産の管理などを任せる制度です。

成年後見制度との違いは、成年後見人が財産の維持・管理を目的として法律上の権限が付与されるのに対し、任意後見人は契約内容に基づいて権限を委任されるため、できることが契約の内容に限られます。

家族信託の利用

家族信託とは、認知症になる前に信頼できる人に自分の財産を託し、管理・運用してもらう制度です。

家族信託も契約により成立します。

認知症になると財産の運用・売却ができなくなるため、あらかじめ財産を信頼できる人の名義に変えておき、その利益のみを還元してもらいます。

任意後見制度との違いは、任意後見が契約内容によって財産管理以外もできるのに対し、家族信託は財産管理に特化しています。

これらを利用することで、認知症になったときの有効な対策となります。

ガッツポーズをする男女

最後に

認知症に関して述べてきましたが、少しは皆さまのお役に立てましたでしょうか。

認知症は、65歳以上の5人に1人が発症するといわれています。

高齢者には癌と同じく身近な病気です。

そして、認知症は特効薬がないため、認知症になる前から対策しないといけない病気でもあります。

この記事を読まれた方は認知症を関係のないものと思わず、ぜひご自身やご両親と認知症について話し合うきっかけにして頂きまして、何かあった時のために対策を立てていただければと思います。

皆さまの「わからない」や「教えてほしい」、「一緒に対策を立ててほしい」に弊社は寄り添います。

がもう相続相談センターでは、認知症対策として遺言書作成のお手伝いから、遺留分をご請求されたい方までに対応した以下のプランをご用意しております。

・遺言書残したいプラン

遺言書残したいプランは、認知症になる前にご自身の財産の相続を決めておきたい方のためのプランです。
ご心配の内容をヒアリングしまして、遺言書の作成をサポートいたします。

・代理人・家族を信じて託すプラン

代理人・家族を信じて託すプランは、認知症になる前の対策として「任意後見」・「家族信託手続」、認知症になったあとの成年後見人制度を利用するための「法定後見」を利用されたい方のためのプランです。
ご依頼者様のご事情をお聞きした上で、どのような制度を利用すればメリットになるかご提案いたします。

何を相談していいかわからないという理由で、問題を先送りにし、後からお困りになる方を多く見てきました。
ぜひ、がもう相続相談センターをご利用ください。
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