
今回の記事では、家族信託についてお話させていだきます。
「信託」という言葉は、銀行のコマーシャル等で耳にしたことがある方はいらっしゃると思います。
ただ、詳しい意味を聞かれたときに、はっきりとした答えを返せる方は少ないでしょう。
さらに、家族信託の意味を聞かれると、
「家族信託って銀行の手続き?」
上記のように考え、疑問に思われる方もいらっしゃると思います。
このような疑問を解決すべく、今回の記事は少し家族信託について簡単に説明させていただきます。
ほかにも、
「家族信託のメリット・デメリットは?」
など、家族信託の専門家である家族信託専門士の本上だからこそ、お伝えできることを述べていこうと思います。

目次
家族信託とは、新しい認知症対策手続きです◎
家族信託は、ご本人様の財産のなかで、信託財産と決めた財産だけをご家族の方に管理してもらう手続きです。
信託財産とは、受託者が委託者と信託契約を結び、その信託目的に従って受益者のために管理・処分などをする財産のことを言います。
この時点で
- ・受託者
- ・委託者
- ・受益者
と知らない単語がたくさん出てきましたね。
簡単にご説明しますと、
- ・委託者は、財産の実質的な所有者(オーナー)であり、財産を託す人を指します。
- ・受託者は、委託者から財産管理を委託された人です。委託者の財産を託された人で、それを管理・運用・処分する人となります。
- ・受益者は、信託された財産(信託財産)から得られる利益を得る人で、委託者と同一人物の場合もありますが、別の人を設定することも可能です。
ご本人に財産がある場合、ご家族の方と、信託財産契約を公正証書で結んでいただくと、以後はご家族の方に財産を管理してもらい、収益があるのであれば、それは委託者のご本人様が受け取るという形になります。
信託財産契約とは、委託者(財産を所有している人)が、受託者(財産の管理処分権限を任せる人)に財産権の管理処分の権限を与えて、定められた目的(受益者へ利益をもたらすこと)に従って、財産の管理、処分などをさせる契約です。
公正証書は、一定の事項(契約の成立など)について、公証人(公証事務を担う公務員)が書証として作成し、内容を証明する書類といえます。
このような公的処理を経て、家族信託の手続きは完了します。
信託と聞いて、信託銀行を思い浮かべる方もいらっしゃると思います。
信託銀行の信託手続きは、商事信託といい、管理してもらうのに費用がかかります。
しかしながら、家族信託はご家族の方に管理してもらうので、特段決めごとをしなければ管理に費用がかかりません。
なお、家族信託をしておくと、委託者であるご本人様が認知症を発症しても、家族信託財産内の財産は動かすことが可能です。
家族信託とは、新しい認知症対策手続きとも言えます。

家族信託のメリット
では、家族信託のメリット・デメリットを見ていきたいと思います。
メリット①家族が管理してくれるので安心
ご本人さまがご家族と話しあって、ご家族に預けたい財産を選択できます。
そのうえで管理していただくので、ご家族との関係が良好であれば、非常に心強いお手続きと言えます。
メリット②ご本人さまが認知症になっても財産管理可能
家族信託財産となった財産は、信託財産契約に基づいてご家族名義となります。
信託財産契約のなかで、処分方法をきちんと決めておけば、それ以後、ご本人様が認知症になられても、信託財産を処分することが可能です。
なぜかというと、ご本人様が認知症を発症する前に、自分で決めた処分方法だからです。
また、家族信託と似た制度としてよく出てくるのが、後見人制度です。
この後見人制度ですが、家族信託とは違い、認知症をご本人さまが発症されても、後見人が自由に財産を動かせるわけではありません。
後見人は法定代理人として、本人の全ての資産を管理することになります。
しかし、後見人は本人の財産を自由に使えるわけではなく、本人の財産と後見人自身の財産とを分けて管理しなければなりません。
後見人には、本人の利益のために本人の資産を使う法律上の義務があります。
ようは、裁判所管轄のもと、後見人がご本人様を代理するお手続きです。
必ず裁判所を通してお手続きを行い、その後、必ず裁判所に報告が必要です。
その点から言えば、家族信託は、ご本人様が家族に財産を預けて、管理してもらう形になります。
裁判所に報告義務がなく、活用しやすいお手続きとなります。

デメリット
先ほどまで家族信託のメリットをお話ししてきましたが、これからはデメリットを述べていきたいと思います。
ご家族との関係性が壊れると家族信託手続きも壊れる
家族信託は、家族との繋がりが非常に大事なお手続きです。
ご自身の財産を、ご家族に預けることから始まります。
そして、ご自身が認知症になられた際にも、信託契約で決めたとおりに、財産を処分することが可能です。
財産を預けると決めた時点で、「預けても問題ない」と思えるほどの、信頼関係がご家族と築けていないと、家族信託を始めることはできません。
ご家族との関係性が壊れていては、このお手続きを継続して行っていくことは、ほぼ不可能です。
家族信託手続きは、ご本人さまの想いがあり、ご家族皆さまがその想いに対して、納得して初めて成立するお手続きです。
認知症対策、遺言書機能、ご相続の承継機能が備わっていいます。このお手続きは、ご家族皆さまに理解をしていただいたうえで、取り組んでいくものです。
そのため、家族信託は、ご家族の誰か1人でも反対意見や関係性が壊れてしまっては、成立しなくなります。

家族信託の具体例 ~備えあれば憂いなし
家族信託を行って良かった事例をあげさせていただきます。
このご家族の家族構成は、お父さま、お母さま、お子さま2人です。
お父さまも、お母さまも高齢になってきて、施設入居を考えているとお子さまからご相談がありました。
相談内容は、
今すぐに施設入居はしないけれど、いずれは父名義の不動産を売却して、父と母は2人で同じ施設に入居させたい、というものでした。
お子さま2人ともご結婚されていて、現在ご実家には、お父さまとお母さまのみが生活している状況でした。
お話しを聞いていると、お父さまとお母さまは、賃貸不動産をお持ちでした。
その不動産は、認知症になれば売却できないとお子さまはお考えでした。
相談内容から、後見人制度と家族信託制度のご説明をさせていただきました。
説明後、家族信託をご希望だったので、お手続きをすすめました。
賃貸不動産については、お父さまが元気な状態の内に処分をしていく方向で、不動産業者をご紹介しました。
そのほかは、ご自宅についてと、1つの預貯金のみ信託財産とする契約を締結していただきました。
契約締結から2年後、お父さまが脳梗塞を患いました。
後遺症で麻痺が残り、介護が必要な状況が起きました。
ご自宅は信託財産になっているので、お子様に処分していただき、お父さま・お母さまは同じタイミングで、施設にご入居の運びとなりました。
家族信託契約をしていなければ、後見人を選任して裁判所の管轄のもと、ご売却となっていたでしょう。
売却まで時間がかかると、タイミングを逃してしまうこともあります。
家族信託のお手続きをしておくと、タイミングを逃さず、不動産を処理できます。
こちらのお客さまの場合は、将来を見据えてのお手続きが、ご家族にとって前向きなものになった、良いケースといえるでしょう。

家族信託って管理業務って難しいんじゃないの?
家族信託の手続きを行うと、管理するのが難しいと考えられる方もいらっしゃると思います。
管理する財産にもよると思いますが、例えば、賃貸不動産を管理して、賃料管理となれば大変だとは思います。
ただ、不動産管理を外注すれば、幾分か手間は減ります。
不動産などの財産がある場合は、ご家族とも相談して、外注業者に頼む等、管理の仕方を考えておくとよいでしょう。

認知症対策をお考えの方は是非
ここまで、家族信託とはどういうものか述べてきました。
財産があり、将来のことを考えると認知症対策をしておきたいなあ、とお考えの方には、家族信託をおすすめしています。
後見人制度についても知りたいし、どちらにしようか迷われている、または詳しく制度について知りたいと思っている方は、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
財産を所有しているご本人さまが、正常の状態で決めた信託契約は、将来に向けての遺言書機能、相続財産の承継機能も含まれています。
そして家族信託は、ここ数年で活性化されてきたお手続きです。
まだ世間に浸透しておらず、ご存じでない方も多いと思いますが、お話を聞いてみたらご自身に最適なお手続きと思えるかもしれません。
そもそも財産は所有している方が、その財産の行方を決めるべきです。
今後その財産でもめたり、損をしないためにも、認知症対策をお考えの方は、検討してほしいお手続きと言えるでしょう。

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相続では、事前対策がすごく重要になります。
後で動いて損をしてしまった方も多く見てきました。
損をしたくない方は、事前に対策することをおすすめします。

がもう相続相談センター
代表本上(ほんじょう)。
大阪司法書士会、東支部所属。相続相談、不動産登記、遺言書作成、税金周りの専門家。相談や行動を後回しにし、後悔・損をしてしまう人を減らすため、日々奮闘中。NSC(吉本)卒業の元お笑い芸人。