法律の言葉というのは、日常生活で触れることが少ないと思います。
・代襲相続
・直系卑属
・自筆証書遺言
・法定相続人
など、字を読んでも難しい。
弁護士や司法書士から直接聞いても、「?」となってしまう単語が満載です。
なかでも、遺留分侵害額請求権という言葉は、相続の当事者とならなければ聞くこともないと思います。
法律の専門家が当然のように話すものだから、聞いたとしても聞けなかったりしますよね。
なので今回は、この難しい単語である「遺留分侵害額請求権」の「遺留分」についてご説明していきたいと思います。
まず、遺留分とは、「いりゅうぶん」と読みます。
この遺留分とは、法律で保障されている相続人が相続財産をもらえる権利です。
相続人とは法律で決まっており、自分の配偶者が亡くなったり、親が亡くなったりした場合は、自然と相続人になります。
相続したくなくても、法律上相続人になってしまい、相続財産を放棄しない限り、自分が相続人であり続けることになります。
そして相続できる財産があった場合、遺言書で「あなたには財産を相続させませんよ」という記載があったとしても、最低限の財産はもらえるという権利があります。
それを「遺留分」と言います。
この説明を聞いても、「なんやようわからん」となる方もいらっしゃると思います。
そんな方のためにも、これから段階を踏んで説明していきたいと思います。
また、
「父の遺言書を見ると、全財産を赤の他人に渡すと書かれてあって、私は相続財産がもらえないの?!」
というショッキングなできごとに直面した方、
「私が亡くなったときに夫には財産を残したくない、でも財産を渡さないといけないの?」
そうお考えの方も、このブログを読んで対策を考えるのもよいでしょう。
相続に関わるとよく出てくる言葉「遺留分」。
今回のお話では、そのややこしい言葉「遺留分」についてお話していきますので、お付き合いいただければと思います。
遺留分とは~最低限の生活を送るための権利
「遺留分」という言葉を、はじめてお聞きする方もいるかもしれません。
なぜなら「遺留分」という言葉が出てくるのは、相続で財産をどう分けようか、ともめているときに出てくる言葉だからです。
円満に相続が行われるときは、必要のない言葉といえます。
そもそも遺留分は、法律で保障されている相続人が相続財産をもらえる権利です。
相続人のなかで財産をもらえない人がいたとき、その人が
「私にも財産を分けてください!」
と主張するためにあります。
たとえば父親が亡くなったあと、遺言書をみてみると、
「あなた以外の兄弟に全額を相続させる」
と書かれていたとします。
遺言書で決まっているから、あなたは父親の財産をもらえないと思うかもしれません。
でも法律では、あなたが父親の財産を少しでも得られるような制度を設けています。
これを「遺留分侵害額請求権」といいます。
一気に言葉が難しくなりましたが、「遺留分侵害額請求権」は相続人の方であれば、請求できる権利です。
ただ、請求できるのは金銭のみで、不動産などの請求できません。
逆にあなたが亡くなるときに、配偶者に財産を残したくないと考えていても、離婚していない限りあなたの配偶者はあなたの財産の相続人になり、遺留分を請求できる権利があるのです。
あなたが相続財産をもらう側でも、残す側でもこの遺留分は関わってきます。
遺留分はどれぐらいもらえるの?
遺留分がどれぐらいもらえるかを知るためには、法定相続分を把握しなければなりません。
法定相続分は以下のように決まっています。
子どもがいるとき
・配偶者 1/2、子供 1/2(子供が複数いるときは子供の数で割る)
子どもがいないとき
・配偶者 2/3、祖父母 二人で1/3(祖父母がいないときは曾祖父母)
子どもも祖父母・曾祖父母もいないとき
・配偶者 3/4、兄弟 1/4(兄弟が複数いるときは兄弟の数で割る)
この法定相続分の1/2が法律上保障されている遺留分です。
ただし、相続人が祖父母または曾祖父母のみだけのときは1/3になります。
※配偶者がおられないときは、配偶者の法定相続分は、同順位の子どもや祖父母等、兄弟に組み込まれます。
詳しくは、お悩み一覧にある記事
をご参照ください。(題名をクリック)
わかりやすく解説しています。
では、具体的な例で説明してみましょう。
<例>
父親が亡くなったときの財産:現金1億円
相続人は母親、兄、あなたの3人。
法定相続分だと、母親 5,000万円(1/2)、兄 2,500万円(1/4)、あなた2,500万円(1/4)を得る権利があります。
ただし、父親は遺言書を残しており「現金 1億円は兄に相続させる」と書かれていました。
この場合、あなたは相続財産を1円も貰えないと思うかもしれません。
でも、遺留分として法定相続分の1/2が保障されていますので、あなたは1,250万円(1/8)を受け取る権利があります。
しかしながら、この権利を主張するにあたっては被相続人が亡くなって1年以内に申し立てを行う必要があります。
また、専門的な知識、手続きが必要ですので、専門家に相談する必要が出てきます。
遺留分の対象となる財産とは?
先ほどまで、遺留分は相続財産をもらえない相続人が、少しでも相続財産をもらうための制度だとお話しました。
では、遺留分の対象となる相続財産とは、どのような財産なのでしょうか。
遺留分の対象となる相続財産は、亡くなったときにある財産だけではありません。
・相続人以外の人に対して、亡くなる1年前から亡くなるまでに贈与した財産
・相続人に対して、亡くなる10年前から亡くなるまでに結婚費用、養子縁組費用や生活費として贈与した財産
上記も遺留分の対象となります。
また、この条件にあてはまるのであれば、通常の贈与だけでなく、精算時課税制度を利用した贈与も対象になります。
精算時課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
(参照元:国税庁 「No.4103 相続時精算課税の選択」)
さらに、贈与する人と相続人以外で贈与を受ける人の「両者」が、遺留分も残らないような大きな金額の贈与だと知っていながら財産を贈与したときは、相続人以外の人に対しても1年という条件はなくなります。
この二つの贈与の金額と、相続財産を足した金額に「負債」を引いた金額が遺留分の対象となる財産になり、その財産の法定相続分の1/2が請求できる遺留分になります。
相続財産をある人にだけ渡したくない!
と考えられている場合は、生前の贈与も遺留分の対象になることを念頭において、対策されることをおすすめします。
そうでないと、せっかく相続財産のある人に渡したくないと思い、生前に贈与していても、その財産も含めて、その人から遺留分を請求されてしまいます。
逆に、遺留分の対象にならない財産の代表として「生命保険金」があります。
この生命保険金は、受取人固有の財産になるため、他の相続人と分ける必要がありません。
また生命保険金は「500万円×相続人の数」という控除額があるため、相続税対策と特定の人へ財産を残す手段として多く用いられるのです。
ただし、相続財産のほぼすべてが生命保険金だけのようなときは、生命保険も遺留分の対象となる、といった裁判例もありますので極端な方法はとらないよう注意が必要です。
遺留分は誰にいつまでに請求すればいいの?
遺留分はいつまでに、誰に請求すればいいのか。
もし、遺留分の請求をしたい場合は、ここから悩みますよね。
これも法律で決まっています。
まずは誰に請求すればいいか、ですが…
遺留分は、相続財産を得た人に請求します。
ただし、相続財産を得る方法も生前贈与、遺言書での財産の取得などさまざまです。
では、相続財産を得た人なら誰にでも請求できるでしょうか。
実は請求できる順番も決まっています。
1:遺言書で財産を得た人
2:生前に贈与で財産を得た人
この順番で、遺留分を請求できます。
次に、いつまでに請求すればいいかについてです。
少し難しいですが、民法の条文を引用します。
民法第1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
難しいことが書いてありますが、ようは、遺留分を請求する資格がある人が
・相続が開始したこと
・自分に遺留分の財産さえ残っていないこと
上記の2つを知ったときから、1年以内に請求しないとき、または亡くなってから10年経過したときのどちらか早い方の条件を満たすと、遺留分を請求できなくなると書かれています。
どんな権利を主張するときも時期を見て、条件を満たさないと行使できないことが書かれています。
遺留分の場合は、被相続人が亡くなったこと、及び自分の遺留分さえ残らないような贈与または遺贈があることを知ってから1年以内に権利を主張しなければいけないわけです。
もしくは、相続が開始して10年が経ったときまでに行使しなければ、もらえるものももらえなくなってしまうのです。
最後に
遺留分の請求について、だいぶかみ砕いて説明してしまったので、語弊が生まれることが心配ですが、一番は専門家に相談することです。
そして、直接聞いたときには、きちんと「わからない」と言えば、専門家も専門用語ばかりでなく、わかるまで説明してくれます。
遺留分をブログに書くときも、入ったばかりの事務スタッフから「難しい!」と言われました。
自分が法律に触れている人間なので、わかりやすく書いているつもりでも、専門家ではないスタッフからはやはり、難しいようです。
なのでこのブログを読んでも、皆さまが「?」となっても間違いではないと思います。
そんなときは、専門家に聞いてみてください。
それをお仕事にしている人なら、きちんと教えてくれますよ。
話をもとに戻しますが、難しい遺留分ですが、これはあくまで、相続財産を受け取れない人のためにある権利です。
遺留分の請求を行うと、相続人の間で相続財産の取り合いになり、家族間で争いがおきます。
悲しいかな、遺留分が出てくるときは、相続でもめているものなのです。できれば、遺留分の話が出ずに、相続を行いたいですよね。
もし自分が遺言書を残そうと思っている方は、家族間の争いを防ぐため、一方的な遺言書を残すことはしないでください。
できれば、亡くなる前に家族間で遺産をどうするか話し合いの場をもうけて、亡くなる人、財産を相続する人、全員が納得した状態で相続開始を迎えられるのが、一番いい財産の残しかたです。
話し合いができなくても、各相続人に遺留分だけは財産を残すような遺言書を作成しておくだけでも、家族間で争うようなことはなくなると思います。
一定程度、諍いを防ぐことができるように、丸くおさめるための遺言書や、相続方法を行うことが大切です。
また、ご自身が亡くなられたあとに、特定の相続人にできるだけの財産を残したくない人にとっても、この制度が足かせになります。
そのため、遺留分の請求対象はどんな財産なのかを把握し、あらかじめその対策を取ることが大事になります。
がもう相続相談センターのサービス
難しい遺留分に関して、述べていきましたが、少しは皆さまのお役に立てましたでしょうか。
このブログが少しでも、悩んでいる方の心を軽くしたら幸いですが、やはりわからないことはまだたくさんあるかと思います。
そして、当事者にならなければ、行動を起こさない方がたくさんいらっしゃいます。ただ、やはり遺留分の請求が起きるようになるのは、事前の対策がなされていないために起こります。
「いつかやればいい」、「うちには関係ない」と思わずに、事前に対策を練っておくことが大切です。
皆さまの「わからない」や「教えてほしい」、「一緒に対策を立ててほしい」に弊社は寄り添います。
がもう相続相談センターでは、遺留分対策として生前の対策のお手伝いから、遺留分をご請求されたい方までに対応した以下のプランをご用意しております。
・遺言書残したいプラン
遺言書残したいプランは、遺留分に配慮した遺言書を作成されたい方のためのプランです。
お客様のご希望にそって遺留分に配慮した遺言書作成をお手伝いいたします。
・亡くなる前に先に渡したいプラン
亡くなる前に先に渡したいプランは、遺留分として渡す財産をできるだけ抑えるためのお手伝いができます。どのような形であなたの財産を誰に残したいかヒアリングした上で、生前対策をお手伝いいたします。
・相続トラブルプラン
相続トラブルプランは、遺留分をご請求されたい方のためのプランです。
ご依頼主様に代わり、財産の調査~遺留分侵害額の確定~遺留分侵害額請求までを行います。
何を相談していいかわからないという理由で、問題を先送りにし、後からお困りになる方を多く見てきました。
ぜひ、がもう相続相談センターをご利用ください。
専門家があなたを支えます。