
相続によって引き継いだ実家が空き家になってしまうケースは少なくありません。
そのまま放置すると固定資産税などの税負担が増えたり、建物の老朽化による管理上の問題が発生したりと、多くのリスクを伴います。
売却や賃貸、あるいは相続放棄といった選択肢の中から、自身の状況に最適な判断を下すための基準を解説します。
空き家を相続した場合の対応については「空き家を相続したらどうする?活用・売却までの流れ」で詳しく紹介しています。
相続した実家を空き家のまま放置する3つの深刻なリスク

実家を相続したものの、活用方法が決まらずに空き家のまま放置してしまうと、さまざまな問題が生じる可能性があります。
経済的な負担が増えるだけでなく、資産価値の低下や近隣トラブルに発展する危険性も潜んでいます。
ここでは、放置することで起こりうる3つの深刻なリスクについて具体的に解説します。
空き家相続のデメリットについては「空き家相続のデメリットまとめ|固定資産税・管理」で詳しく紹介しています。
税金が最大6倍になる「管理不全空き家」指定の可能性
適切な管理が行われていない空き家は、2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法により「管理不全空き家」に指定される恐れがあります。
この勧告を受けると、土地にかかる固定資産税の優遇措置(住宅用地の特例)が適用されなくなります。
その結果、土地の固定資産税が最大で6倍に跳ね上がる可能性があり、経済的な負担が大幅に増加します。
資産価値が下がり続け、売却も賃貸も困難になる
建物は人が住まなくなると、換気不足による湿気や老朽化の進行が早まり、急速に傷んでいきます。
壁のシミや構造材の腐食などが進むと、資産価値は著しく低下します。
価値が下がった物件は、売却しようにも買い手が見つかりにくくなり、賃貸に出すにも大規模なリフォームが必要になるなど、活用が非常に困難な状態に陥ります。
倒壊や不法侵入など、近隣トラブルの原因になる危険性
管理されていない空き家は、建物の倒壊や外壁・屋根材の飛散といった危険性をはらんでおり、近隣住民に被害を及ぼす問題に発展しかねません。
また、庭の雑草が繁茂して景観を損なったり、害虫が発生したりするほか、不法侵入や放火の標的になることもあります。
こうした問題が原因で、近隣との深刻な争いに至るケースもあります。
実家を相続したら最初にやるべきこと【判断の前に】
相続した実家をどうするか判断する前に、まず済ませておくべき法的な手続きや、相続人間での合意形成があります。
これらの手続きを怠ると、後々のトラブルの原因になったり、不動産の処分がスムーズに進まなかったりする可能性があります。
自身の権利を確定させ、円滑に次のステップへ進むために不可欠な準備です。
不動産相続の準備については「不動産をスムーズに相続するためにやるべき3つの準備」で詳しく紹介しています。
2024年から義務化された「相続登記」の手続きを済ませる
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に法務局で名義変更の手続きを行う必要があります。
正当な理由なくこの義務を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
売却や賃貸などの処分を行う上でも、自身の名義に登記されていることが大前提となります。
他の相続人と話し合うべき遺産分割の4つの方法
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を開き、誰が実家を相続するのか、どのように分けるのかを決めなければなりません。
分割方法には、そのまま現物を分ける「現物分割」、一人が相続し他の相続人にお金を支払う「代償分割」、売却して現金を分ける「換価分割」、複数人で共有名義にする「共有分割」の4つがあります。
共有分割は将来的な争いの種になりやすいため、慎重な検討が必要です。
相続する権利を持つ全員の合意がなければ、不動産の処分は進められません。
実家以外の財産も全て手放すことになる「相続放棄」の注意点
相続放棄は、実家などの不動産だけでなく、預貯金といったプラスの財産も含めたすべての遺産を相続する権利を拒否する手続きです。
実家だけを放棄するといった選択はできません。
相続放棄を検討する場合は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
この期間を過ぎると、原則として放棄は認められません。
相続放棄した空き家の管理義務については「相続放棄した空き家はどうなる?法改正後の管理義務と手続き」で詳しく紹介しています。
どうするのが正解?相続した実家の4つの選択肢を徹底比較

相続した実家の今後を考える際、主な選択肢として「売却」「賃貸」「維持・居住」「解体」の4つが挙げられます。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、自身の状況や実家の状態によって最適な選択は異なります。
現金化を優先するのか、資産として保有し続けるのか、あるいは土地として活用するのか、各選択肢を比較し、慎重に判断することが重要です。
【売却】まとまった現金を得たい場合のメリットとデメリット
実家を売却する最大のメリットは、まとまった現金を得られることと、固定資産税や管理の手間から解放される点です。
一方で、思い出の詰まった家を手放すことへの寂しさや、希望する値段ですぐに売れるとは限らないというデメリットがあります。
建物の状態によっては、解体して更地として処分する方が高く売れるケースもあります。
【賃貸】家賃収入で収益化を目指すメリットとデメリット
賃貸に出すメリットは、実家という資産を手放すことなく、継続的な家賃収入を得られる点です。
しかし、貸し出すためにはリフォームなどの初期投資が必要になる場合が多く、空室リスクや家賃滞納、入居者とのトラブルといったリスクも伴います。
駅からの距離や周辺環境など、賃貸需要が見込める立地かどうかが重要な判断材料となります。
【維持・居住】自分で住む、または管理する場合のメリットとデメリット
自身や家族が住むという選択肢は、住居費を抑えられるメリットがあります。
また、別荘として利用するなど、定期的に管理を続けることで建物の劣化を防ぎ、愛着のある暮らしを維持できます。
ただし、固定資産税や火災保険料、修繕費といった維持費が継続的に発生し、自身のライフスタイルに合わない場合は負担になる可能性も考慮する必要があります。
【解体】更地にして土地活用するメリットとデメリット
建物を解体して更地にすると、倒壊などのリスクや建物の管理が不要になります。
更地として売却する、駐車場やアパートを建てて活用するなど、土地活用の選択肢が広がります。
しかし、数百万円単位の解体費用がかかるほか、住宅用地の特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が高くなる可能性がある点には注意が必要です。
更地のままでは、処分が完了するまで税負担が増加します。
あなたの状況に合うのはどれ?後悔しないための判断基準
相続した実家をどうするかは、多くの人にとって難しい決断です。
建物の資産価値や維持管理にかかる費用、そして税金の特例制度などを総合的に考慮し、自身のライフプランに合った選択をすることが後悔しないための鍵となります。
ここでは、客観的な視点で判断するための具体的な基準を3つ紹介します。
実家の相続と処分については「実家の空き家をどうする?不動産の相続と処分のポイント」で詳しく紹介しています。
築年数や立地から考える「売却」か「賃貸」かの見極め方
建物の築年数が古く大規模な修繕が必要な場合や、駅から遠いなど賃貸需要が見込めない立地の場合は、売却を検討するのが現実的です。
逆に、都心部や駅近で建物の状態が良ければ、リフォームして賃貸に出すことで収益化が期待できます。
まずは不動産会社に査定を依頼し、売却した場合の値段と賃貸に出した場合の想定家賃を把握して、客観的な資産価値を知ることが判断の第一歩です。
「空き家の3,000万円特別控除」が使えるうちに売却を判断する
相続した空き家を売却する場合、一定要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる税の特例があります。
この特例の適用を受けるには、相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに売却するなどの条件があります。
売却によって利益が出る見込みがある場合は、この期限内に売却を判断することが、税負担を軽減する上で非常に重要です。
維持費はいくら?修繕費や管理費をシミュレーションして保有可否を判断する
空き家を保有し続ける場合、固定資産税や都市計画税、火災保険料、水道光熱費の基本料金、定期的な修繕費や庭の手入れ費用などがかかります。
これらの年間にかかる管理コストを具体的に算出し、長期的に支払い続けられるかをシミュレーションすることが重要です。
収支がマイナスになる場合は、早めの売却などを検討する必要があります。
判断に迷ったら専門家へ、何度でも無料相談で最適な道筋を
相続した実家の空き家問題は、不動産の知識だけでなく、税金や法律に関する専門的な知見が求められる複雑な問題です。
自分一人で抱え込まず、不動産会社や税理士、司法書士といった専門家に相談することが、最適な解決策を見つけるための近道です。
無料で何度でも相談に応じてくれる窓口もあるため、まずは気軽に問い合わせて、状況を整理することから始めましょう。
相続の相談については「何度でも何時間でも無料相談」で詳しく紹介しています。
相続した実家の空き家問題に関するよくある質問
実家を相続した際に生じる空き家問題は、多くの人が疑問や不安を抱えています。
ここでは、固定資産税の支払いや相続放棄、売却時の家の状態など、特によく寄せられる質問について解説します。
Q. 相続した空き家の固定資産税はいつから誰が支払うのですか?
固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者に納税義務があります。
年の途中で被相続人が亡くなった場合、納税義務は相続人が引き継ぎます。
翌年以降は、遺産分割協議によって実家を相続した人、または相続登記を完了させた新しい所有者が支払うことになります。
Q. 管理が難しいので、実家だけを相続放棄することは可能ですか?
いいえ、実家のみを対象とした相続放棄はできません。
相続放棄は、預貯金などのプラスの財産も含め、被相続人のすべての財産を相続する権利を放棄する制度です。
特定の財産だけを選んで放棄することは認められていません。
Q. 荷物が残っている古い実家でも売却の相談はできますか?
はい、相談できます。
不動産会社の中には、家財道具などの処分(遺品整理)も含めてワンストップで対応してくれるところもあります。
まずは専門家に相談し、荷物が残ったまま売却するのか、処分してから売却するのかなど、最適な方法を検討するのがよいでしょう。
まとめ:実家の空き家問題は先送りにせず、早めの判断で将来の不安を解消しよう
相続した実家を空き家のまま放置することは、税金の増加や資産価値の低下、近隣トラブルなど多くの問題を引き起こす可能性があります。
まずは相続登記を確実に済ませ、相続人全員で話し合いの場を持つことが重要です。
その上で、売却や賃貸といった選択肢の中から、ご自身の状況に最も適した方法を早期に判断し、行動に移すことが、将来の不安を解消することにつながります。



