「借金がなければ、相続放棄する必要なんてないですよね?」
相続に関するご相談で、こうした言葉をよく耳にします。
確かに「相続放棄=借金回避のための制度」というイメージは一般的ですが、実はそれだけではありません。
実際には「財産にプラスがあっても、放棄した方がいいケース」も存在します。
しかもその多くが、相続が始まってから気づくには遅すぎる、“盲点”のようなケースです。
執筆者:司法書士 ほんじょう たかし
若干18歳で単身ブラジルにサッカー留学に行き、帰国後、吉本NSCへ入学。お笑いの道では花咲かず、親戚の葬儀屋で働く中で司法書士と出会い、相続の仕事を志す。
司法書士の資格を取得し、経験を積んだのち「がもう相続相談センター」をオープン。現在では2000名以上のご相談を受け、城東区を中心に多くの相続問題を解決に導く。

1.相続放棄は“借金があるときだけ”ではない
多くの方が、相続放棄は「借金を背負わされそうなときの対策」として理解しています。
もちろんそれは正しいのですが、放棄が適しているケースはそれに限りません。
以下のようなケースでも「相続放棄」が有効な選択肢になります:
- 財産よりも手間・責任・管理コストの方が重い
- 相続によって「人間関係のトラブル」に巻き込まれる可能性がある
では具体的なケースを見ていきましょう↓
2.借金がなくても「相続放棄すべきケース」とは?
ここでは、借金がまったくないにもかかわらず、相続放棄を検討すべき典型的なケースを4つご紹介します。
● ケース①:空き家や田畑など“維持費だけかかる財産”を相続する場合

財産がプラスであっても、たとえば以下のような不動産は負担だけが残る可能性があります。
- 住む予定のない老朽化した空き家
- 雑草や獣害がひどい管理放棄された山林・農地
- 建物解体や売却に費用がかかる土地建物
このような財産を引き継ぐと、固定資産税・草刈り・近隣対応・売却の手間などがすべて自己負担になり、「持っているだけで赤字」という状態になることがあります。
● ケース②:他の相続人と関係が悪く、今後の交渉に巻き込まれたくない場合

相続は“お金”だけでなく“人間関係”も絡みます。
- きょうだい間に遺恨がある
- 自分だけ遠方で話し合いに参加しづらい
- 強引な相続人がいて話が進まない
こういった状況では、相続人として関わるだけでストレスや責任を抱えることになります。
あえて放棄を選び、関わりを断つ方が心身ともに負担が軽くなるケースもあります。
● ケース③:相続分が極めて少なく、手間ばかりが大きい場合

たとえば法定相続分がわずか1/8で、ほとんど財産をもらえない場合、
名義変更・申告・書類のやりとりなどの手間に見合わず、時間と労力だけが奪われることになります。
● ケース④:相続によって“事業・借地・保証人”などを引き継ぐリスクがある場合

たとえば親が個人事業主だったり、誰かの保証人になっていたりした場合、
プラスの財産よりも事後的に発生する義務や責任の方が重くなる可能性があります。
また、「土地は親のものだけど、実は借地だった」など、相続後に契約や管理の問題が発覚することも。
3.相続放棄する場合の注意点

相続放棄は、手続きのやり方やタイミングを間違えると無効になるリスクがあります。
ここでは、相続放棄を選ぶ際に注意すべきポイントを解説します。
● 期限は「相続開始を知ってから3か月以内」
相続放棄には、相続の開始を知った日から3か月以内という厳格な期限があります。
この期間を過ぎると、相続放棄が認められず、自動的に相続を承認したとみなされるため(単純承認)、注意が必要です。
● 家庭裁判所への申述が必要
相続放棄は「放棄します」と家族や親戚に伝えるだけでは成立しません。
必ず、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述(しんじゅつ)し、正式に受理される必要があります。
● 一度放棄すると撤回はできない
相続放棄は、一度家庭裁判所で受理されると、原則として撤回できません。
後になって「やっぱり財産があることがわかった」などの場合でも、放棄した相続人は受け取ることができなくなります。
● 財産を処分すると放棄できなくなることも
相続財産(不動産、預貯金、家具、車など)を一部でも使ったり、売却・処分した場合、
「相続を承認した」とみなされ、放棄ができなくなる恐れがあります。
● 他の相続人に“しわ寄せ”がいくことも
相続放棄をすると、自分の相続分が他の相続人に移るため、
- 他の兄弟に負担が増える
- 争いの火種になるといったケースもあります。
事前に話し合いや伝達をしておくと、トラブルを避けられます。
4.まとめ:相続放棄=“借金回避”だけではない
相続放棄というと、「借金を背負わないための制度」と思われがちですが、
実際にはそれだけでなく、手間、重い責任、家族仲が悪くなる火種、などから距離を置くための手段としても有効です。
たとえば以下のようなケースでは、借金が一切なくても放棄が検討されるべきです:
- 住む予定のない老朽化した空き家を相続した
- 他の相続人との関係が悪く、今後関わりたくない
- 相続分がごくわずかで、手続きの負担が大きい
- 契約や義務が複雑で、責任が発生しそうな財産が含まれている
相続放棄には3か月以内の申立て期限があります。一度放棄すると原則として撤回ができないという厳格なルールもあります。
加えて、財産に手をつけると放棄できなくなることもあるため、慎重な判断が必要です。
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