あなたは死後事務委任という言葉を聞いたことがありますか?
もし自分の死後、事務処理はどうすれば良いのだろう、、と頭を悩ましている方もいらっしゃるかもしれません。
世の中には、身寄りのない人、身寄りがいても、相続人同士が疎遠である。また、海外在住の人や仕事や介護などで、死後の事務にかける時間がない人等いろいろな状況の方がいらっしゃると思います。
そんな方にとって死後事務委任は安心できる制度でもあるのです。そこで今回は死後事務委任制度についてご紹介したいと思います。
誰にも迷惑かけたくない。でも死後の事務処理はちゃんとしたい。そんな方に読んでいただければと思います。
◯死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、委任者(当人)が受任する人に自身の死後の事務を委任する契約のことを言います。
自身の意思を死後、残された人に伝える方法として[遺言]がよく知られていると思います。しかし、遺言で定める事ができるのは民法で定められている内容になります。
その為、民法で定められている内容以外の事項については遺言に記載していたとしても法的な拘束力がないとも言えます。
つまりどう言うことかというと、自身の伝えたい事を遺言に羅列したとしても法律で定められている事項以外の遺言に関しては相続人、もしくは遺言の執行者に確実に実現してもらえる、とは限らないのです。
そんな時に安心できる材料として、これからご紹介する[死後事務委任]と言う制度があります。
では死後事務委任契約を行えば具体的にどんなことを委任する事ができるのでしょうか。
◯死後事務委任契約で委任できる内容とは
死後事務委任契約によって委任できる範囲というのはとても広いです。
例えば、”死亡届の提出”や”葬儀の手配”なども委任する事ができます。その他にも、
・医療費や公共料金などの支払
・遺品の整理
・遺産の管理
・相続手続き
なども委任する事ができます。
大きく分けると、[葬儀に関すること][行政手続きに関すること][生活に関すること]などに分けられます。
⚫︎ 葬儀に関すること
・葬儀についての指定
・埋葬についての指定
・供養についての指定
⚫︎ 行政手続きに関すること
・死亡届の提出
・運転免許証、健康保険証の返還手続き
・年金の受給資格の抹消の手続き
・固定資産税などの税金に関する支払い手続き
⚫︎ 生活に関すること
・生前利用していた病院、介護施設に関する料金精算の手続き
・賃貸不動産の契約の解除や明渡しの手続き
・水道光熱費などの公共料金の支払いや解約に関する手続き
・SNS(インスタ、X、フェイスブックなど)のアカウント削除手続き
・パソコン、携帯電話の個人情報の抹消処理
・生前飼っていたペットの環境設備
◯死後事務委任を使って、周りの人に迷惑をかけず遺言を残すには?
死後事務委任の制度を利用し、安心して遺言を残すためには以下のことについて注意しておくと良いかもしれません。
⚫︎ 委任する事務の範囲を明確にする
委任する事務の内容をはっきりと決めておくことで委任者にも伝わりやすいです。逆に委任の内容が曖昧だと受任者が困惑したり、トラブルに発展する可能性があります。
そうならないためにも委任する際は事務の範囲を明確に決めておくようにしましょう。
⚫︎ 信頼できる人を委任者として選ぶ
死後事務委任契約は、本人が亡くなった後に、さまざまな手続きを本人に代わって行う契約になります。そのため、受任者は信頼できる人を選ぶことがとても大切になってきます。
選任する際は、
・本人との関係性
・本人の意思を尊重してくれるかどうか
・本人の財産を管理できるだけの能力があるかどうか
・本人の死後も、死後事務を円滑に進めてくれるかどうか
上記を考慮して選任する必要があります。
⚫︎ 遺言書を作成しておくと安心できる
ここまで読んでいただければお分かりだと思うのですが、死後事務委任契約で遺言を残すことはできません。
そのため、死後事務委任契約とは別に遺言書を作成しておくと、遺産の相続や遺品の処分など、死後に関する希望を明確に伝えることができます。
遺言書は公正証書で作成することで、遺言の効力が強固になり、トラブルの防止にもつながります。
遺言書に記載する内容としては以下になります。
・遺産の相続人
・遺産の分け方
・遺品の処分方法
・葬儀や埋葬の方法
・死後事務委任契約の受任者
つまり、 ”公正証書遺言”で、財産の行き先を決めつつ、”死後事務委任契約”で、死後に必要な事務手続きを決めることによって確実に履行されるという安心感を確保する事ができます。実務上は死後事務委任契約も公正証書で行います。
◯司法書士、行政書士などの専門家に依頼もできる
「自分の死後のことまでを知人に頼むのはちょっと…」
「親戚に頼むのも気が引ける…」
そんな方もいらっしゃるかもしれません。
もしこれらに該当するのであれば、司法書士や行政書士などの法律の専門家に頼むこともできます。専門家に事務を依頼する以上、報酬は発生してしまいますが、確実に遂行する事ができます。
◯まとめ
今回は死後事務委任制度についてご紹介しました。
死後事務委任を利用することにより、安心して余生を楽しめるかもしれません。また、周りの人に迷惑をかけたくない、、このように考えている人も司法書士や行政書士に依頼することもできます。
死後の事務処理を強固なものにする場合は、死後事務委任契約(公正証書)と公正証書遺言を作成するようにしてください。より高い安心を手に入れることができるはずです。
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