相続欠格と廃除の違いとは?条件・手続き・効果を比較表で解説

親族との間に深刻なトラブルがあり、特定の人物に財産を相続させたくない、と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
「相続させない方法」には相続欠格と廃除という2つの制度がありますが、それぞれの違いは複雑で分かりにくいものです。

この記事を読めば、相続欠格と相続廃除の具体的な違いが分かり、ご自身の状況がどちらに該当するのか、そして相続権を失わせるためにどのような手続きが必要かを判断できるようになります。

目次

相続における「相続欠格」と「相続廃除」の基本的な考え方

相続欠格と相続廃除とは、どちらも特定の相続人から相続する権利を失わせるための法的な制度です。
相続欠格は、相続において著しく不当な行為をした者に対して、法律上当然に相続権を剥奪する制度を指します。
一方、相続廃除は、被相続人の意思に基づき、家庭裁判所の手続きを経て特定の相続人から相続権を奪う制度です。

両者は相続権を失わせるという点で共通しますが、その要件や手続きにおいて大きな違いがあります。

【比較表】相続欠格と相続廃除の主な違いが一目でわかる

【比較表】相続欠格と相続廃除の主な違いが一目でわかる

相続欠格と相続廃除の主な違いを以下の表にまとめました。
被相続人の意思の有無や、家庭裁判所での手続きが必要かどうかという点が、両者を区別する大きなポイントです。

このように、相続欠格は法律が定めた重大な不正行為があった場合に自動的に適用されるのに対し、相続廃除は被相続人の感情や意思が強く反映される制度となっています。
次に、相続欠格が適用される具体的なケースについて見ていきましょう。

相続欠格|特定の行為によって自動的に相続権を失う制度

相続欠格|特定の行為によって自動的に相続権を失う制度

相続欠格とは、民法で定められた特定の不正行為を行った相続人が、法律上当然に相続権を失う制度です。
この制度は、被相続人の意思とは関係なく、公の相続秩序を維持するために設けられています。
欠格事由に該当する行為があった場合、特別な手続きを経ることなく、その相続人は自動的に相続する資格を失います。

相続欠格が適用される5つの具体的なケース

相続欠格の対象となる事由は、民法第891条に以下の5つが具体的に定められています。
被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとして刑に処せられた場合
被相続人が殺害されたことを知りながら、告発や告訴を行わなかった場合
詐欺や強迫によって、被相続人が遺言を作成したり、変更・撤回したりすることを妨げた場合

詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を作成させたり、変更・撤回させたりした場合
被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、または隠した場合
これらの行為は、遺産の取得を目的とした悪質な行為や、被相続人の最後の意思表示を侵害する行為であり、相続人としての資格を根本から否定するものです。

相続欠格に特別な手続きは必要ない理由

相続欠格は、法律で定められた事由に該当した時点で自動的にその効力が生じるため、家庭裁判所への申立てといった特別な手続きは必要ありません。
相続権を失った事実は戸籍にも記載されません。
ただし、相続欠格に該当する相続人がその事実を認めず、遺産分割協議などで相続権を主張してくる場合があります。

そのようなトラブルを防ぐため、他の相続人が相続欠格の事実を証明する「相続欠格者に関する証明書」を作成し、遺産分割協議書に添付することが有効です。
自動的に権利を失う相続欠格に対し、被相続人の意思に基づいて手続きを行うのが相続廃除です。

相続廃除|被相続人の意思に基づき家庭裁判所に申し立てる制度

相続廃除|被相続人の意思に基づき家庭裁判所に申し立てる制度

相続廃除とは、被相続人が特定の人に財産を相続させたくないと考えた場合に、その意思に基づき家庭裁判所に申し立てることによって、相続人の権利を剥奪する制度です。
相続欠格事由にはあたらないものの、被相続人に対して虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合に認められる可能性があります。
この制度は遺留分を持つ推定相続人(配偶者、子、直系尊属)のみが対象です。

相続廃除が認められる重大な非行や虐待などの具体例

相続廃除が認められるためには、客観的に見て相続権を失わせるほどの重大な事由が必要です。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
虐待:日常的な暴力や暴言により、被相続人に肉体的・精神的な苦痛を与え続ける行為。
重大な侮辱:被相続人の名誉や社会的信用を著しく傷つける行為。

例えば、不貞行為を繰り返したり、犯罪行為で家族に多大な迷惑をかけたりする場合。
著しい非行:被相続人の財産を勝手に使い込む、多額の借金を繰り返して返済を迫るなどの行為。
単なる親子喧嘩や性格の不一致といった理由だけでは、相続廃除は認められにくい傾向にあります。

生前に家庭裁判所へ申し立てる相続廃除の手続き

被相続人が生前に相続廃除の手続きを行う場合、自身の住所地を管轄する家庭裁判所に「推定相続人廃除の審判申立て」を行います。
申立てにあたっては、申立書のほか、被相続人と対象となる相続人の戸籍謄本、そして廃除の理由を証明するための証拠(日記、手紙、診断書、録音データなど)が必要です。

家庭裁判所が調査や審問を行い、廃除が相当であると判断すれば審判が確定します。
審判が確定すると、その旨が対象者の戸籍に記載されます。

遺言書で意思を示して行う相続廃除の手続き

被相続人が遺言書によって相続廃除の意思を示すことも可能です。
この場合、遺言書に「相続人〇〇を廃除する」という意思と、その理由を明確に記載しておく必要があります。
被相続人の死後、遺言執行者に指定された人が、家庭裁判所に対して「推定相続人廃除の審判申立て」を行います。

手続きや要件は生前申立ての場合と同様で、家庭裁判所の審判が確定すれば、対象者の戸籍に廃除の旨が記載されます。
これらの制度を利用する際には、知っておくべき重要な注意点が存在します。

相続欠格・廃除を検討する前に知っておくべき重要ポイント

相続欠格・廃除を検討する前に知っておくべき重要ポイント

相続欠格や相続廃除によって特定の相続人の権利を失わせたとしても、それで全ての問題が解決するわけではありません。
特に、その相続人に子がいる場合には、代襲相続という別の問題が発生します。

また、一度行った廃除を取り消すことができるのかどうかも、事前に理解しておくべき重要なポイントです。

注意点!どちらの制度でも相続人の子には「代襲相続」が発生する

相続欠格や相続廃除によって相続権を失った人に子(被相続人から見て孫)がいる場合、その子が代わりに相続権を引き継ぐ「代襲相続」が発生します。
代襲相続とは、本来相続人となるはずだった人が相続開始前に死亡したり、相続欠格・廃除によって相続権を失ったりした場合に、その人の子が代わりに同じ順位で相続人となる制度です。

つまり、問題のある相続人本人に財産を渡さないようにしても、その子供に財産が渡る可能性がある点は十分に注意しなければなりません。

一度決定したら覆せない?相続廃除の取り消し手続きについて

相続欠格は法律上の制度であるため、一度該当するとその決定を覆すことはできません。
一方、相続廃除は被相続人の意思に基づく制度であるため、被相続人の意思が変われば取り消すことが可能です。
例えば、廃除した相手が改心し、関係が修復された場合などが考えられます。

廃除の取り消しを行う際も、廃除の申立てと同様に、被相続人が家庭裁判所に「推定相続人廃除の取消しの審判申立て」を行う必要があります。
取り消しが認められると、戸籍に記載された廃除の旨も抹消されます。
自分のケースがどちらに当てはまるか、判断に迷うこともあるでしょう。

自分の状況はどちらに該当?判断に迷ったときの考え方のヒント

相続欠格と相続廃除のどちらに該当するかを判断する際は、「行為の性質」と「被相続人の意思の有無」という2つの軸で考えると分かりやすくなります。
まず、相続権を失わせたい相手の行為が、遺言書の偽造や殺人といった法律で定められた5つの欠格事由に明確に当てはまる場合は、相続欠格に該当します。
一方、日常的な虐待や侮辱、浪費といった行為が原因であれば、相続廃除を検討することになります。

相続廃除はあくまで被相続人の意思に基づいて行われる手続きであり、家庭裁判所がその正当性を判断するという点が大きな特徴です。

相続トラブルを回避するためがもう相続相談センターの無料相談が役立つ理由

相続欠格や廃除は、法律的な要件が厳格に定められており、手続きも複雑です。
特に相続廃除を申し立てる場合、家庭裁判所を納得させられるだけの客観的な証拠が必要不可欠です。
感情的な対立が激しくなりがちな相続問題において、当事者だけで判断し、手続きを進めることは非常に困難であり、かえってトラブルを深刻化させるリスクもあります。

そのため、まずは相続問題に詳しい弁護士などの専門家に相談し、法的な観点から客観的なアドバイスを受けることが、問題を円滑に解決するための第一歩となります。

複雑な問題を整理し、最適な解決策を一緒に見つけられる

相続問題は、法律だけでなく、家族間の感情的なしがらみも絡み合うため、非常に複雑化しやすい特徴があります。
専門家は、絡み合った問題の所在を法的な視点から冷静に分析し、何が問題の根本原因なのかを明確にしてくれます。

そして、相続欠格や廃除が本当に最善の策なのか、あるいは遺言の内容を工夫する、生前贈与を行うなど、他の選択肢も含めて、個々の状況に応じた最適な解決策を一緒に考えてくれます。
一人で抱え込まず、第三者の専門的な視点を取り入れることが重要です。

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相続に関する悩みは、一度の相談ですべてが解決するとは限りません。
状況が変化したり、新たな疑問が生まれたりすることもあるでしょう。
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相続欠格と廃除の違いに関するよくある質問

ここでは、相続欠格と廃除に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。

Q. 相続欠格と相続廃除、どちらがより厳しい処分と考えられますか?

結論として、相続欠格の方がより厳しい処分と考えられます。
相続廃除は被相続人の意思によって取り消しが可能ですが、相続欠格は法律の規定によって自動的に相続権を失うため、一度該当すると取り消すことができません。
この取消しの可否という点から、相続欠格の方が不可逆的で厳しい処分といえるでしょう。

Q. 被相続人が亡くなった後からでも相続廃除の手続きは可能ですか?

被相続人が遺言書で相続廃除の意思表示をしていた場合に限り、亡くなった後でも手続きは可能です。
この場合、遺言執行者が家庭裁判所に相続廃除の申立てを行います。

裁判所に廃除が認められると、相続開始の時点にさかのぼって相続権が失われ、その旨が戸籍にも記載されます。
遺言がない場合は、死後に申し立てることはできません。

Q. 相続欠格や廃除になった相手に財産を渡す方法はありますか?

相続権を失った相手に財産を渡したい場合、方法は欠格か廃除かで分かれます。
相続廃除された人には、遺言によって財産を譲る「遺贈」ができます。生命保険の受取人に指定することや、生前贈与も可能です。
一方、相続欠格に当たる人は遺贈を受けることもできません(民法965条が欠格の規定を準用しているためです)。この場合は生前贈与や生命保険の受取人指定で渡すことになります。

ただし、他の相続人の遺留分を侵害しないよう配慮が必要です。

まとめ

相続欠格と相続廃除は、どちらも特定の相続人から相続権を失わせる制度ですが、その性質は大きく異なります。
相続欠格は、法律で定められた重大な不正行為があった場合に、手続き不要で自動的に相続権が失われる制度です。
一方、相続廃除は、被相続人の意思に基づき、虐待や侮辱などを理由に家庭裁判所へ申し立てて相続権を剥奪する制度です。

どちらの制度も、相続権を失った本人に子がいれば代襲相続が発生する点に注意が必要です。
判断に迷った場合や手続きを進める際には、専門家へ相談することをおすすめします。

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特に、家庭裁判所での手続きが必要となる相続廃除では、申立ての理由を客観的な証拠で示す必要があります。
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