相続や離婚によって不動産が共有名義になったものの、活用や売却について他の共有者と意見が合わず、お困りではないでしょうか。
共有物分割請求とは、こうした共有状態を解消するための法的な手続きです。
この記事を読めば、共有不動産の問題を解決するために、共有物の分割を請求する具体的な方法や流れを理解できます。
さらに、ご自身の状況に最も適した分割方法を判断できるよう、手続きの全体像を詳しく解説します。
共有物分割請求とは?不動産などの共有状態を解消する法的手続き

共有物分割請求とは、不動産などの共有物について、その共有関係を解消するために、他の共有者に対して分割を求める法的な手続きです。
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求する権利を持っています。
この請求権は、共有者全員の合意がなくても、単独で行使できるのが特徴です。
主に、相続によって複数の相続人が不動産を共有しているケースや、離婚時に夫婦の共有財産を分けるケースなどで利用されます。
この請求を行う際には、法的に定められた手順を踏む必要があります。
共有物分割請求の全手順|協議から訴訟までの3ステップを解説
共有物の分割を請求する手続きは、大きく「協議」「調停」「訴訟」の3つのステップで進みます。
まずは共有者同士の話し合い(協議)から始め、まとまらなければ簡易裁判所の調停、それでも解決しない場合の最終手段が訴訟です。
いきなり裁判になるわけではなく、段階的に進んでいく点を押さえておきましょう。ただし調停は必ず通さなければならない手続きではないため、話し合いの余地がないときは協議から訴訟へ進むこともできます。
分割を実現するためには、それぞれの状況に応じた適切な分割方法を選ぶことが求められます。
ステップ1:まずは共有者間での協議(話し合い)から始める

共有物分割請求の第一歩は、共有者全員での協議(話し合い)です。
裁判外で当事者が話し合い、分割方法や条件について合意を目指します。
この段階で円満に和解できれば、時間や費用を最も抑えることが可能です。
協議では、後のトラブルを避けるためにも、分割の具体的な内容について明確に合意形成を図ることが重要になります。
協議で決めておくべき4つの重要項目
共有者間の協議では、主に以下の4つの項目を具体的に決定します。
分割方法の決定:不動産を物理的に分ける「現物分割」、一人が取得して他方に対価を支払う「代償分割」、売却して現金を分ける「換価分割」のいずれかを選択します。
代償分割の場合の金額と支払方法:代償分割を選ぶ場合、不動産の評価額を算定し、誰がいくらをいつまでに支払うのかを明確に定めます。
諸費用の負担割合:分筆や登記にかかる費用、不動産鑑定費用、売却時の仲介手数料などを誰がどの割合で負担するのかを取り決めます。
登記手続きの段取り:分割後の所有権移転登記を誰が主導し、いつまでに行うのかを確認し合います。
これらの項目を曖昧にすると、後々新たな紛争の原因となりかねません。
【失敗回避】当事者だけの話し合いがまとまらない根本的な理由
当事者間の話し合いだけで解決が難しいのには、いくつかの根本的な理由が存在します。
一つは、長年の親族間の感情的な対立が背景にあり、冷静な議論ができないケースです。
また、各共有者の希望(住み続けたい、現金化したいなど)が異なり、利害が根本的に衝突している場合も少なくありません。
さらに、不動産の適正な価値や法的な分割方法に関する知識が不足しているため、公平な解決策を見出せないことも、話し合いが不調に終わる一因です。
協議がまとまったら「共有物分割協議書」を作成する
協議によって共有者全員の合意が得られたら、その内容を「共有物分割協議書」という書面にまとめます。
この協議書には、決定した分割方法、代償金の支払条件、費用負担などを具体的に記載し、共有者全員が署名・捺印してください。
作成した協議書は、法務局での所有権移転登記の際に必要となる重要な書類です。
後の紛争を防ぎ、合意内容の履行を確実にするため、強制執行認諾文言付きの公正証書として作成しておくことが推奨されます。
ステップ2:協議が不成立なら簡易裁判所に共有物分割調停を申し立てる
当事者間での協議がまとまらない場合、次のステップとして簡易裁判所に共有物分割調停(民事調停)を申し立てます。申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所です。
なお、遺産分割がまだ済んでいない相続不動産の場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申立てになります。
調停は、裁判官と民間の有識者から選ばれた調停委員が間に入り、当事者双方の意見を聞きながら、話し合いによる解決を目指す手続きです。
訴訟(裁判)とは異なり、あくまで合意形成を目的としているため、比較的柔軟な解決が期待できます。
調停は非公開で行われるため、プライバシーが守られる点も特徴です。
共有物分割調停の申し立てに必要な書類と手続きの流れ
共有物分割調停を申し立てる際の手続きの流れと、一般的に必要となる書類は以下の通りです。
相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立書を提出する。
裁判所が申立書を受理し、第1回調停期日を指定する。
指定された期日に当事者が出頭し、調停委員を介して話し合いを行う。
複数回の期日を経て、合意を目指す。
共有物分割調停申立書対象不動産の登記事項証明書固定資産評価証明書当事者全員の戸籍謄本・住民票不動産の査定書や公図など
調停委員を介して冷静に話し合うことのメリット
調停手続きを利用する最大のメリットは、中立的な立場の調停委員が間に入ることで、感情的になりがちな当事者同士が冷静に話し合える環境が整う点にあります。
調停委員は、双方の主張を整理し、法的な観点や過去の事例に基づいた客観的な助言を行うため、当事者だけでは見つけられなかった妥協点や解決策が見つかる可能性が高まります。
直接相手と顔を合わせずに意見を伝えられるため、精神的な負担が軽減され、円満な和解につながりやすいのも利点です。
ステップ3:調停でも解決しない場合の最終手段「共有物分割請求訴訟」

調停でも共有者間の合意が成立しなかった場合、最終的な解決手段として共有物分割請求訴訟を提起することになります。
訴訟は、当事者の主張や提出された証拠に基づき、裁判所が分割方法について法的な判断を下す手続きです。
協議や調停と異なり、当事者の合意は必要なく、裁判所の判決には強制力が伴います。
これは共有物の分割を請求する手続きにおける最終段階です。
訴訟提起で必要になる書類一覧と提出先の裁判所
共有物分割請求訴訟を提起する際は、以下の書類を準備し、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に提出します。ただし、訴訟の目的の価額によっては簡易裁判所が管轄することもあります。また、遺産分割が完了していない相続による共有状態の共有物分割については、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行う必要があります。
主な必要書類は以下の通りです。
- 訴状
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 公図、地積測量図など
- 共有関係を証明する書類(遺産分割協議書など)
- これまでの協議や調停の経緯がわかる資料
訴状には、請求の趣旨と請求の原因を具体的に記載する必要があります。
訴訟になった場合の審理期間の目安
共有物分割請求訴訟の審理期間は、事案の複雑さや当事者間の争いの程度によって大きく異なりますが、一般的には半年から1年程度かかるケースが多く見られます。
不動産の評価額や分割方法について争いが大きい場合や、共有者が多数にのぼる複雑な案件では、2年以上に及ぶこともあります。
口頭弁論や証拠調べなどの手続きを複数回経るため、協議や調停に比べて解決までに長期間を要する点を念頭に置く必要があります。
【注意点】訴訟での判決内容は裁判所の判断に委ねられる
訴訟における最大の注意点は、最終的な分割方法の決定権が裁判所にあることです。
原告や被告が特定の分割方法を希望したとしても、裁判所は当事者の主張や提出された証拠、不動産の状況などを総合的に考慮し、最も公平かつ妥当と判断する方法で分割を命じます。
そのため、必ずしも自身の希望通りの判決が得られるとは限りません。
例えば、代償分割を希望しても、支払能力がないと判断されれば、競売を命じる換価分割の判決が下される可能性もあります。
最終的な判決に至る前に、どのような分割方法があるのかを理解しておくことが大切です。
状況に応じた最適な選択は?共有不動産を分ける3つの方法

共有不動産を分割するには、主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」という3つの方法があります。
どの方法が最適かは、不動産の種類(土地、建物など)、共有者の希望、資力などによって異なります。
それぞれの方法のメリットとデメリットを理解し、当事者の状況に最も合った選択をすることが、円満な解決への鍵となります。
これらの方法は、協議、調停、訴訟のいずれの段階でも検討されます。
それぞれの方法を理解した上で、手続きにかかる費用も把握しておきましょう。
現物分割:土地などを物理的に切り分ける方法
現物分割は、共有物である不動産そのものを物理的に分割する方法です。
例えば、一つの広大な土地を複数の土地に分筆し、各共有者がそれぞれの土地を単独で所有するケースがこれにあたります。
この方法のメリットは、各共有者が不動産という資産をそのまま手元に残せる点です。
しかし、土地の形状や位置によって価値に差が生じやすく、公平な分割が難しい場合があります。
また、建物やマンションの一室など、物理的に分割することが不可能な不動産には適用できません。
代償分割:共有者の一人が不動産を取得し他の共有者に対価を支払う方法
代償分割は、共有者の一人が不動産の所有権を単独で取得する代わりに、他の共有者に対してその持分に相当する金銭を支払う方法です。
例えば、相続した実家に住み続けたい相続人が、他の兄弟に代償金を支払って単独名義にするケースが典型例です。
この方法のメリットは、不動産を売却せずに共有関係を解消できる点にあります。
一方で、不動産を取得する側に十分な資力がなければ利用できず、不動産の評価額を巡って争いになりやすいという側面もあります。
換価分割:不動産を売却して得た現金を分配する方法
換価分割は、共有不動産を第三者に売却し、その売却代金から諸経費を差し引いた現金を、各共有者の持分割合に応じて分配する方法です。
この方法の最大のメリットは、金銭で分配するため、持分に応じて公平な分割がしやすい点です。
共有者の誰もその不動産の利用を希望しない場合に適しています。
ただし、市場価格で売却するため、希望する金額で売れるとは限らない点や、売却までに時間がかかる可能性がある点に注意が必要です。
共有物分割請求にかかる費用の内訳と相場を解説

共有物の分割を請求する際には、弁護士費用や裁判所の手続きにかかる実費など、さまざまな費用が発生します。
手続きをどの段階まで進めるかによって総額は大きく変動するため、あらかじめ費用の内訳と相場を把握しておくことが重要です。
特に訴訟にまで発展すると、不動産鑑定費用などが追加で必要になる場合もあり、計画的な資金準備が求められます。
費用を正確に理解しておくことは、手続きを進める上での重要な判断材料となります。
費用を抑え、円滑に解決するためには、専門家へ相談するタイミングも重要です。
弁護士に依頼する場合の費用(相談料・着手金・成功報酬)
弁護士に共有物分割請求を依頼する場合の費用は、主に相談料、着手金、成功報酬から構成されます。
相談料は事務所ごとに定められているため、依頼を検討する段階で確認しておくと安心です。
着手金は、依頼時に支払う費用で、一般的には20万円から30万円程度が目安とされています。
成功報酬は、事件が解決した際に、得られた経済的利益に応じて支払うもので、一般的には経済的利益の5.5%から11%程度に設定されています。
事案の難易度や不動産の価額によって費用は変動するため、依頼前に見積もりを確認することが不可欠です。
裁判手続きで必要となる実費(印紙代・予納郵券代)
調停や訴訟など裁判所の手続きを利用する際には、弁護士費用とは別に実費が必要です。
主なものに、申立書や訴状に貼付する「収入印紙代」と、裁判所からの書類送付に使われる「予納郵券代(郵便切手代)」があります。
印紙代は、対象となる不動産の固定資産税評価額に基づいて算出され、高額になるほど印紙代も高くなります。
予納郵券代は、数千円から1万円程度が一般的ですが、当事者の数によって変動します。
不動産の価値を調べるための鑑定費用
共有不動産の適正な価値について当事者間で争いがある場合、不動産鑑定士による専門的な鑑定が必要になることがあります。
特に訴訟では、裁判所が客観的な評価額を判断するために鑑定を命じるケースが少なくありません。
不動産鑑定の費用は、不動産の種類や規模、評価の難易度によって異なりますが、一般的には20万円から50万円程度が相場です。
この費用は、原則として当事者が裁判所の定める割合で分担して予納します。
がもう相続相談センターへの相談はどの段階がベスト?費用を抑えて円満解決へ
共有物分割に関する専門家への相談は、できるだけ早い段階、特に当事者間の協議を始める前に行うのが最も効果的です。
この段階でがもう相続相談センターにご相談いただければ、司法書士が法的な見通しを整理し、話し合いの進め方や適切な分割方法をお伝えします。
初期段階で専門家が介入することで、感情的な対立を避け、冷静な話し合いを促進できるため、協議での円満解決の可能性が高まります。
結果として、調停や訴訟へ移行せずに済み、トータルの費用や時間を大幅に節約することにつながります。
がもう相続相談センターの無料相談は、ご相談で料金は一切かかりません。回数制限、時間制限もございません。詳しくは「何度でも無料相談」をご覧ください。
共有物分割請求のやり方に関するよくある質問
共有物の分割を請求する手続きやその方法について、よく寄せられる質問にお答えします。
共有物分割請求の話し合いを相手方が拒否した場合、どうすればよいですか?
相手方が話し合いを拒否する場合、まずは内容証明郵便で共有物の分割を請求する意思を正式に通知します。
これにより、請求した証拠が明確に残ります。
それでも相手が応じない場合は、簡易裁判所に共有物分割調停を申し立て、法的な手続きの場で話し合いを進めることになります。
調停でも解決しなければ、最終的に訴訟を提起して裁判所の判断を求めることが可能です。
共有物分割請求のやり方で、裁判を避けて解決する方法はありますか?
裁判を避けて解決するためには、まず当事者間での協議による和解を目指すのが最も重要です。
専門家を交えて冷静に話し合うことで、合意形成の可能性が高まります。
協議がまとまらない場合でも、すぐに訴訟へ移行するのではなく、簡易裁判所の共有物分割調停を利用する方法があります。
調停はあくまで話し合いによる解決を目指す手続きであり、ここで合意できれば裁判を回避できます。
共有物分割請求にかかる弁護士費用は誰が負担するのですか?
共有物分割請求にかかる弁護士費用は、原則として、依頼した本人が全額を自己負担します。
例えば、AさんとBさんが共有者で、Aさんだけが弁護士に依頼した場合、その費用はAさんが支払います。
訴訟で勝訴したとしても、相手方に弁護士費用を請求することは基本的に認められていません。
ただし、当事者間の合意によって費用分担を定めることは可能です。
まとめ
共有物分割請求は、共有不動産の問題を法的に解消するための手続きであり、まずは共有者間の協議から始め、合意できない場合は調停、最終的に訴訟という流れで進みます。
分割方法には現物分割、代償分割、換価分割の3種類があり、それぞれの状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。
手続きには弁護士費用や実費などが発生しますが、専門家へ早い段階で相談することで、交渉を有利に進め、結果的に費用や時間を抑えた円満な解決につながる可能性が高まります。



