遺産分割の4つの方法と相続手続きの流れを図解|揉めない分け方とは

身近な方が亡くなり、遺産の分け方について不安や疑問を感じていませんか。
遺産相続は、誰にでも起こりうる身近な問題ですが、その手続きや流れは複雑で分かりにくい点が多くあります。
この記事では、遺産相続の基本的な流れから、4つの具体的な分割方法、そして相続人同士で揉めないためのポイントまでを専門家が分かりやすく解説します。

読み終える頃には、ご自身の状況に最適な分割方法を選択し、具体的な話し合いや手続きに着手できる状態を目指せます。

目次

まずは遺言書の有無を確認!遺産分割の基本的な進め方

遺産分割を始めるにあたり、最初に行うべきことは故人が遺言書を残しているかどうかの確認です。
遺言書がある場合、原則としてその内容に沿って遺産を分けることになります。
一方、遺言書がない、あるいは遺言書に記載されていない財産がある場合は、相続人全員で「遺産分割協議」という話し合いを行い、誰がどの財産を相続するのかを決める必要があります。

相続の手続きは、故人が亡くなったことを知ったタイミングから始まりますが、まずはこの遺言書の有無が、その後の進め方を大きく左右する最初の分岐点となります。
遺言書が見つからない場合の行動については「相続時の遺言書の探し方から検認まで」で詳しく紹介しています。

【誰が相続人?】法定相続人の範囲と優先順位を一覧で解説

【誰が相続人?】法定相続人の範囲と優先順位を一覧で解説

遺産の分け方を話し合う前提として、まずは誰が相続人になるのかを法律上のルールに従って正確に把握する必要があります。
亡くなった方の配偶者は、常に相続人となります。
配偶者以外の親族には優先順位が定められており、第1順位は子、子がいない場合は第2順位の直系尊属(父母や祖父母)、子も直系尊属もいない場合は第3順位の兄弟姉妹が相続人です。

例えば、相続人が配偶者と子ども3人の場合は、配偶者と3人の子どもが相続人となります。
もし相続人となるはずの子が先に亡くなっていても、その子に子ども(故人から見て孫)がいれば、その孫が代わりに相続人(代襲相続)になります。
相続人調査は戸籍を辿って行うため、思いがけない相続人が見つかるケースも少なくありません。

【いくらもらえる?】法定相続分の計算方法と具体的な割合

誰が相続人になるかが分かったら、次にそれぞれの取り分が法律上どのくらいになるのかを確認しましょう。
民法上で定められた相続割合の目安を「法定相続分」と呼びます。
これはあくまで相続人間の話し合いがまとまらない場合の目安であり、相続人全員が合意すれば、このルールと異なる分け方も可能です。

具体的な割合は、配偶者と子(第1順位)が相続人の場合、配偶者が1/2、子が1/2です。
子が複数いる場合は1/2を人数で均等に分けます。
配偶者と直系尊属(第2順位)の場合は配偶者が2/3、直系尊属が1/3、配偶者と兄弟姉妹(第3順位)の場合は配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4となります。
この計算が遺産分割協議のベースとなります。

【図解】遺産分割の4つの方法|メリット・デメリットを徹底比較

【図解】遺産分割の4つの方法|メリット・デメリットを徹底比較

法定相続分はあくまで割合の目安であり、実際の遺産分割では、不動産や預貯金といった財産の種類に応じて具体的な分け方を決める必要があります。
その主な方法として、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方式が存在します。
それぞれの方法にはメリットと注意点があり、どの方式を選ぶかによって手続きや結果が大きく変わります。

例えば、不動産をそのまま分けたいのか、売却して現金で分けたいのかなど、相続人の希望や財産の内容に応じて最適な方法を選択することが重要です。

①現物分割:財産をそのままの形で分ける方法

現物分割とは、土地は長男に、預貯金は次男に、といったように個々の財産をそのままの形で各相続人が取得する分け方です。
この方法のメリットは、先祖代々の土地や自宅などの財産を売却せずにそのまま残せる点や、手続きが比較的シンプルであることです。

一方で、不動産と預金のように価値が大きく異なる財産しかない場合、法定相続分通りに公平に分けることが難しいというデメリットがあります。
それぞれの財産の価値をどう評価するかで意見が対立する例も少なくありません。

②代償分割:特定の相続人が財産を取得し他の相続人にお金を支払う方法

代償分割は、特定の相続人1人が不動産など法定相続分を超える価値の財産を相続する代わりに、他の相続人に対して不足分を現金で支払う(代償金を支払う)という分け方です。
事業用の資産や実家など、分けられない財産を特定の相続人が引き継ぎたい場合に有効な方法といえます。
メリットは財産を維持できる点ですが、財産を取得する相続人に代償金を支払うための十分な資力が必要になるという大きな注意点があります。

また、不動産の評価額を巡ってトラブルになる可能性もあります。

③換価分割:財産を売却して現金で分ける方法

換価分割とは、不動産などの遺産を売却して現金に換え、その現金を相続人間で分割する方法です。
この分け方の最大のメリットは、1円単位で公平に分割できるため、相続人間の不満が出にくい点です。
誰もその不動産に住む予定がない場合や、預金など分けやすい財産が少ない場合に適しています。

ただし、財産を売却する際に仲介手数料などの費用がかかるほか、売却益に対して譲渡所得税が課税される可能性がある点には注意が必要です。

④共有分割:一つの財産を複数人の名義で所有する方法

共有分割は、一つの不動産を、例えば兄弟3人で3分の1ずつといった形で、複数の相続人の共有名義にする分け方です。
一見、公平な分割方法に見えますが、将来的にその不動産を売却したり、賃貸に出したりする際には共有者全員の同意が必要となり、意見がまとまらずトラブルの原因になりやすいという大きなデメリットがあります。

さらに、共有者の1人が亡くなると新たな相続が発生し、権利関係がより複雑化するため、専門家からは基本的に推奨されない分割方法です。

なぜ遺産分割は揉めるのか?当事者だけの話し合いに潜む落とし穴

これらの分割方法を検討しても、相続人同士の話し合いがうまくいかないケースは少なくありません。
遺産分割で揉める主な原因は、不動産の評価額など財産に対する認識の違い、特定の相続人が生前に受けた援助(特別受益)や、親の介護など故人への貢献(寄与分)に対する主張の対立です。

当事者だけで話し合いを進めると、こうした法的な論点と個人的な感情が混ざり合い、相手方への不信感から冷静な議論が難しくなるという落とし穴があります。
感情的な対立を避けるためにも、客観的な第三者の視点を取り入れることが有効な場合があります。

遺産分割協議をスムーズに進めるための5つのステップ

遺産分割協議をスムーズに進めるための5つのステップ

トラブルを避けてスムーズに相続の話し合いを進めるためには、正しい手順を踏むことが重要です。
遺産分割協議は、一般的に「相続人の確定」「相続財産の調査」「遺産分割協議の実施」「遺産分割協議書の作成」「財産の名義変更」という5つのステップで進みます。

この一連の流れを正確に理解し、一つずつ着実に進めていくことで、話し合いの論点が明確になり、円滑な合意形成につながります。
親が亡くなった後の相続手続きの流れについては「【遺産相続】親が亡くなりました。その後の手続きや相続の流れを解説」で詳しく紹介しています。

ステップ1:相続人の確定と戸籍収集

遺産分割協議の最初の手順は、法的に相続権を持つ人を全員確定させることです。
これを怠ると、後から新たな相続人が判明した場合に協議をやり直さなければなりません。
具体的には、亡くなった人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本を取得します。

これにより、離婚した元配偶者との間に子どもがいないか、認知している子がいないかなどを網羅的に確認し、全ての相続人を法的に確定させます。

ステップ2:相続財産の調査と財産目録の作成

次に、相続の対象となる財産をすべて調査し、一覧表である「財産目録」を作成する手順に進みます。
調査対象には、不動産(土地・建物)、預金、有価証券といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。
不動産は登記簿謄本や固定資産評価証明書、預貯金は金融機関から残高証明書を取り寄せるなどして、財産の全体像を正確に把握することが、公平な分割の前提となります。
相続財産目録の作り方については「相続財産目録の作り方|初めてでも迷わない書き方と記載例」で詳しく紹介しています。

ステップ3:遺産分割協議の実施

相続人と財産が確定したら、いよいよ相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を実施します。
この手順では、ステップ2で作成した財産目録をもとに、誰がどの財産を、どのような方法で取得するのかについて具体的な案を出し合い、合意を目指します。
協議は相続人全員が参加し、全員が合意することが必須です。

1人でも内容に反対する人がいれば、協議は成立しません。

ステップ4:遺産分割協議書の作成と署名・押印

相続人全員の合意が得られたら、その内容を法的な効力を持つ書面「遺産分割協議書」として作成します。
この書類は、後の不動産の所有権移転登記や預貯金の解約といった手続きで、相続人全員の合意があったことを証明するために必要不可欠です。

基本的なルールとして、相続人全員が内容を確認した上で署名し、実印を押印します。
この手順を正確に行うことで、後のトラブルを防ぎます。

ステップ5:財産の名義変更手続き

遺産分割協議書の作成後、最後の手順として、協議内容に従って各財産の名義変更手続きを行います。
不動産であれば法務局で所有権移転登記を、預貯金であれば金融機関で解約や名義変更の手続きを進めます。
自動車や株式なども同様に名義変更が必要です。

これらの手続きには期限が設けられているものもあるため、速やかに完了させることが重要です。
銀行相続手続きの必要書類については「銀行相続手続きの必要書類とは?ケース別一覧と全体の流れを解説」で詳しく紹介しています。

話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の手続きへ

話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の手続きへ

もし、これらのステップを踏んでも相続人全員の合意が得られない場合は、当事者間での解決は困難です。
その場合、次の手段として家庭裁判所での法的な手続きに移行することになります。
相手方と直接交渉しても話が進まない、あるいは感情的な対立で話し合いができない状況でも、裁判所が間に入ることで解決への道が開ける可能性があります。

手続きには「調停」と「審判」の2つの段階があります。

解決策①:遺産分割調停で話し合う

遺産分割調停とは、家庭裁判所において、調停委員という中立的な第三者が相続人の間に入り、話し合いを仲介してくれる手続きです。
調停委員が双方の主張を個別に聞き取り、専門的な視点から助言や解決案を提示してくれるため、当事者同士で話すよりも冷静に議論を進められるメリットがあります。
相手方と直接顔を合わせずに手続きを進めることも可能で、あくまで話し合いによる合意を目指します。

解決策②:遺産分割審判で裁判官に判断を委ねる

調停でも話し合いがまとまらず不成立となった場合、手続きは自動的に「遺産分割審判」に移行します。
審判では、調停とは異なり、裁判官が各相続人の主張や提出された資料など、一切の事情を考慮して、法律に基づいた遺産の分割方法を決定します。

この裁判官による決定(審判)には法的な拘束力があり、相続人はその内容に従わなければなりません。
これにより、相続問題は最終的な解決を迎えます。

遺産分割に期限はない?相続税申告の「10ヶ月の壁」に要注意

遺産分割に期限はない?相続税申告の「10ヶ月の壁」に要注意

遺産分割協議そのものには、法律上の明確な期限は設けられていません。
相続税の申告と納付には「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があり、これが事実上のタイムリミットとして機能します。
この期限内に遺産分割が完了していないと、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった大幅な節税につながる特例が利用できなくなるという大きな注意点があります。

また、2024年4月からは相続登記が義務化され、原則3年以内の手続きが必要となりました。
放置すると不利益が生じるため、早めに協議をまとめることが重要です。
相続税の基礎控除と計算方法については「相続税っていつからかかる?基礎控除と計算方法をわかりやすく」で詳しく紹介しています。

遺産分割の方法に関するよくある質問

ここまで遺産分割の様々なルールや手続きについて解説してきましたが、実際の現場でよく寄せられる相続の分け方に関する質問についても見ていきましょう。

Q. 遺産分割協議で揉めないためのコツはありますか?

相手方の意見を尊重し、感情的にならず冷静に話し合うことが重要です。
また、生前の貢献度など、金銭に換算しにくい主張は客観的な証拠を用意すると良いでしょう。
話し合いがこじれそうな場合は、早期に弁護士などの専門家を第三者として交えるのも有効な手段です。

感情的な対立を避け、法的な論点を整理することが円満解決の注意点となります。

Q. 遺産分割の割合は必ず法律通りに分ける必要がありますか?

いいえ、その必要はありません。
民法上の法定相続分はあくまで目安です。
相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で自由に遺産を分けることが可能です。

例えば、特定の相続人が多く財産を譲り受けるといった内容でも、全員の合意があればその分け方は有効な遺産分割として認められるのがルールです。

Q. 遺産分割協議に期限はありますか?過ぎるとどうなりますか?

遺産分割協議自体に期限はありません。
しかし、相続税の申告期限(10ヶ月)や相続登記の義務(原則3年以内)など、関連手続きには期限があります。
特に10ヶ月を過ぎると税金の特例が使えなくなる注意点があります。

放置すると過料が科されたり、税負担が増えたりする不利益が生じるため、早めに協議をまとめることが推奨されます。

まとめ

遺産分割は、まず遺言書の有無を確認し、遺言がなければ相続人全員による遺産分割協議で分け方を決定します。
分割方法には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つがあり、財産の状況や相続人の希望に応じて最適な方法を選択することが重要です。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判といった手続きに移行します。

遺産分割自体に期限はありませんが、相続税申告の10ヶ月という期限が実質的なタイムリミットとなるため、計画的に進める必要があります。
相続は複雑な手続きが多いため、不安な場合は専門家への相談も検討しましょう。
相続手続きを専門家に任せるメリットについては「相続手続きを遺産承継業務で楽に済ませる方法」で詳しく紹介しています。

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遺産分割は、法律や税金が絡む複雑な手続きであり、ご家族の状況や財産の内容によって最適な解決策は異なります。
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