相続で生活費に困る原因と対処法|親の負担分や特別受益も解説

相続で生活費に困る原因と対処法|親の負担分や特別受益も解説

相続が発生すると、遺産分割協議が終わるまで故人の財産に手をつけられず、生活費の支払いに困ることがあります。
また、生前の援助が特別受益と見なされ相続分が減ったり、親が負担すべき費用を立て替えていたりするなど、金銭的な問題は多岐にわたります。
この記事では、相続で生活費に困る具体的なケースと、それぞれの状況に応じた法的な対処法について解説します。

目次

相続で生活費に困る4つのケースとそれぞれの状況

相続に際して生活費の問題が生じる状況は、主に4つのケースに分けられます。
被相続人の死亡直後、遺産分割協議中、そして遺産分割後と、それぞれの段階で異なる問題が発生する可能性があります。
具体的には、口座凍結による資金不足、相続人による財産の使い込み疑惑、生前贈与の扱い、そして相続財産そのものが少ないことへの将来不安が挙げられます。

ケース1:口座凍結で当面の生活費が引き出せない

金融機関は、口座名義人の死亡を知った時点でその口座を凍結します。
これは、相続人が確定し、遺産の分割方法が決まるまで、一部の相続人が勝手に預金を引き出すことを防ぐための措置です。
しかし、これにより故人の口座から葬儀費用や当面の生活費を引き出せなくなり、残された家族が経済的に困窮する原因となります。

たとえ故人の財産であっても、法的な手続きを経なければ引き出すことはできません。

ケース2:他の相続人による親の預金の使い込みが疑われる

被相続人と同居していた相続人が、生前にキャッシュカードを使って預金を引き出していた場合、その使途が問題になることがあります。
「生活費のためだった」と主張しても、他の相続人から見れば不透明な出金であり、財産の使い込みと疑われるケースは少なくありません。

このような状況は、相続人間の信頼関係を損ない、遺産分割協議が紛糾する大きな原因となります。
相続を放置することの危険性については「【危険】相続を放置するとどうなる?後戻りできない8つのリスク」で詳しく紹介しています。

ケース3:生前の生活費援助が「特別受益」にあたるか不明

相続人の中に、被相続人から生前に住宅購入資金や事業資金などの援助を受けていた人がいる場合、その援助は「特別受益」と見なされる可能性があります。
特別受益とは遺産の前渡しと考える制度で、該当するとその相続人の法定相続分から援助額が差し引かれます。

通常の生活費程度の援助は扶養義務の範囲内とされますが、高額な金銭の贈与については、その判断が争点となることがあります。

ケース4:相続財産が少なく今後の生活費が足りるか不安

特に配偶者が亡くなったケースでは、残された財産だけでは今後の生活を維持できるか不安になることがあります。
自宅はあっても現金が少ない場合、住み慣れた家を売却しなければ生活費を捻出できない状況に陥る可能性も考えられます。
年金収入だけでは不十分な場合、相続した財産をどのように生活資金として活用していくか、長期的な視点での計画が求められます。

遺産分割前に凍結された口座から生活費を引き出す「預貯金の仮払い制度」とは

遺産分割協議が長引くと、その間の生活費の確保が大きな問題となります。
この問題に対処するため、2019年7月の民法改正で「預貯金の仮払い制度」が創設されました。

この制度により、相続人は遺産分割が完了する前でも、被相続人の預貯金の一部を金融機関の窓口や家庭裁判所の手続きを通じて引き出すことが可能になりました。
これにより、葬儀費用や当面の生活費など、緊急性の高い支払いに故人の財産を充てることができます。

仮払い制度で引き出せる金額の上限

預貯金の仮払い制度を利用して引き出せる金額には上限が定められています。
金融機関の窓口で直接手続きする場合、引き出せるのは「相続開始時の預貯金残高×1/3×仮払いを受ける相続人の法定相続分」で計算した金額です。
ただし、同一の金融機関からの払い戻しは150万円までという上限も設けられています。

この計算式と上限額を理解し、必要な金額を計画的に引き出す必要があります。

家庭裁判所の判断なしで金融機関にて手続きする方法

仮払い制度を利用する最も簡単な方法は、金融機関の窓口で直接手続きを行うことです。
この場合、家庭裁判所の判断は必要ありません。
手続きには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)、相続人全員の戸籍謄本、申請する相続人の印鑑証明書と実印などが必要です。

金融機関によって必要書類が異なる場合があるため、事前に問い合わせて確認しておくとスムーズに進みます。

家庭裁判所の仮処分を利用して払い戻しを受ける方法

他の相続人の協力が得られない場合や、金融機関で定められた上限額(150万円)以上の払い戻しが必要な場合は、家庭裁判所に「預貯金の仮処分」を申し立てる方法があります。
これは、遺産分割の調停や審判が係属していることが前提となります。

家庭裁判所が、申立人の生活状況などを考慮して仮払いの必要性を認めれば、特定の預貯金を仮に取得することが可能になります。
金融機関での手続きよりも時間と手間がかかります。

他の相続人による「生活費の使い込み」が疑われる場合の対処法

他の相続人による被相続人の財産の使い込みが疑われる場合、まずは感情的にならず、客観的な証拠を集めて冷静に対応することが重要です。
事実関係を正確に把握し、法的な根拠に基づいて返還を求めていく必要があります。
使い込みの事実が明らかになれば、不当利得返還請求や遺産分割協議での調整といった方法で、公平な遺産分割を目指すことになります。
遺言書がない場合の相続については「遺言書がないとどうなる?相続手続きで起きるリスク」で詳しく紹介しています。

まずは金融機関で取引履歴を開示請求する

使い込みの疑いがある場合、最初に行うべきは被相続人名義の預金口座の取引履歴(入出金明細)を金融機関に開示請求することです。
相続人であれば、単独でこの手続きを行えます。
取引履歴を取り寄せることで、いつ、いくらの金額が、どのような方法で引き出されたのかが明らかになります。

特に、被相続人が亡くなる直前や入院中などに高額な出金がないかを確認することが重要ですます。

使途不明金が確認できた場合の返還請求の流れ

取引履歴から使途不明金が確認できた場合、まずはそのお金を引き出した相続人に対して説明を求め、任意での返還を交渉します。
話し合いで解決しない場合は、内容証明郵便で返還を請求し、それでも応じなければ「不当利得返還請求訴訟」を提起することになります。
訴訟では、相手方が金銭を正当な理由なく取得したことをこちら側が立証する必要があるため、弁護士などの専門家に相談するのが賢明ですます。

遺産分割協議で使い込み分を考慮して調整する方法

訴訟を避けたい場合は、遺産分割協議の中で解決を図る方法もあります。
これは、使い込まれた金額をその相続人が受けた「特別受益」として扱い、相続財産に持ち戻して計算する方法です。

具体的には、本来の遺産に使い込み額を加算したものを「みなし相続財産」とし、そこから各相続人の法定相続分を算出します。
そして、使い込んだ相続人の取得分からは、その金額を差し引くことで公平な分割を目指します。

親からの生活費援助は「特別受益」として相続分から差し引かれる?

親が子どもの生活を助けるために金銭的な援助をすることは珍しくありません。
しかし、その援助が他の兄弟との間で不公平を生む場合、相続時に「特別受益」として扱われることがあります。
特別受益とは、特定の相続人が被相続人から受けた特別な利益(贈与)のことで、遺産の前渡しと見なされます。

この制度は、相続人間の公平を図るために設けられていますが、どのような援助が該当するかの判断は簡単ではありません。

原則として扶養義務の範囲内なら特別受益にならない

親子間や夫婦間には、民法上の扶養義務があります。
そのため、被相続人が扶養義務の範囲内で行った生活費の援助は、特別受益には該当しないのが原則です。
例えば、同居している子どもの食費や光熱費を親が支払っていたり、学生の子どもの学費や仕送りをしたりすることは、通常、扶養義務の履行と見なされます。

したがって、このような日常的な金銭の扶助が相続分の計算に影響を与えることはありません。

特別受益と判断されやすい高額な金銭援助の具体例

扶養義務の範囲を超え、遺産の前渡しと判断されやすい高額な金銭援助には、いくつかの具体例があります。
例えば、住宅の購入資金、事業を始めるための開業資金、海外留学の費用といった、特定の相続人のためだけに行われた多額の贈与がこれに該当します。
また、特定の相続人が抱えていた借金を親が肩代わりした場合なども、特別受益と見なされる可能性が高いです。

これらの援助は、他の相続人との間で不公平を生じさせるため、相続分の算定時に考慮されます。

被相続人の「持ち戻し免除の意思表示」があれば特別受益に含めない

特定の相続人に対して特別受益にあたる生前贈与があったとしても、被相続人が「その贈与分は遺産の計算に含めなくてよい」という意思を示していた場合は、例外的に持ち戻し計算が免除されます。
これを「持ち戻し免除の意思表示」と呼びます。
この意思表示は、遺言書に明記されるのが最も確実ですが、書面がなくても、贈与の経緯や当時の状況から被相続人の意思が合理的に推測できる場合には、黙示の意思表示として認められることもあります。

相続財産が少なく今後の生活が不安なときに活用できる制度

相続によって得られる財産が預貯金よりも不動産に偏っている場合や、そもそも遺産総額が少ない場合、残された家族は今後の生活に大きな不安を抱えることがあります。
特に高齢の配偶者にとっては、住居の確保と生活資金の捻出が深刻な問題となります。

こうした状況に対応するため、法律では残された家族の生活の負担を軽減し、安定を図るための制度がいくつか用意されています。
適切に活用することで、税負担を抑えつつ生活基盤を守ることが可能です。

自宅に住み続けながら生活資金を確保できる「配偶者居住権」

配偶者居住権は、被相続人が亡くなった後も、残された配偶者が無償で自宅に住み続けられる権利です。
この権利を取得すれば、自宅の所有権を他の相続人が相続した場合でも、終身または一定期間、住み慣れた家を出ていく必要がありません。
最大のメリットは、自宅の所有権を相続するよりも評価額が低くなるため、その分、預貯金などの他の財産をより多く相続でき、当面の生活資金を確保しやすくなる点です。

夫婦間の相続で活用が期待されます。

借金が多い場合に検討すべき「相続放棄」

相続は、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も引き継ぐことになります。
調査の結果、明らかにプラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合は、「相続放棄」を検討すべきです。
相続放棄とは、家庭裁判所に申し立てることで、初めから相続人ではなかったとみなされる手続きです。

これにより、被相続人の借金を返済する義務を一切負わずに済みます。
ただし、相続開始を知った時から3ヶ月以内に手続きをする必要があります。

相続の生活費問題は専門家への無料相談がおすすめ

これまで見てきたように、相続に伴う生活費の問題は、預貯金の仮払い制度や特別受益、配偶者居住権など、専門的な法律知識を必要とする場面が数多くあります。
また、相続人間の感情的な対立が絡むと、当事者だけでの解決は一層困難になります。

問題を複雑化させないためにも、相続に詳しい司法書士や弁護士などの専門家に早めに相談することが重要です。
多くの事務所では無料相談を実施しており、まずは専門家の視点から状況を整理し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
相続で困らないための最初の行動については「相続で最初にやってはいけないことは?何も分からない人が陥りやすい罠」で詳しく紹介しています。

相続 生活費 困るに関するよくある質問

ここでは、相続と生活費に関する問題で、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

亡くなった親のクレジットカードで生活費を支払っても大丈夫ですか?

絶対に使用してはいけません。
カード名義人以外の使用は規約違反であり、相続財産に手をつけて債務の存在を認めたと見なされます。
これにより「単純承認」が成立し、後から親に多額の借金が発覚しても相続放棄ができなくなるリスクを負うことになります。

カードは速やかに解約手続きをしてください。

親の介護費用を立て替えていた分は、相続財産から返してもらえますか?

他の相続人全員の同意があれば、遺産分割協議において相続財産から精算することが可能です。
同意が得られない場合でも、親の療養看護に特別な貢献をしたとして「寄与分」が認められ、その分多く財産を受け取れる可能性があります。
立て替えた費用の領収書など、負担を証明する証拠を残しておくことが重要ですます。

生活費の援助が特別受益とみなされないようにするための生前対策はありますか?

扶養義務者間の生活費や教育費の援助は、必要な都度、直接充てる場合に贈与税がかからないとされています。贈与契約書を作成し、援助が「生活費の援助」であることを明記することは、その意図を示す一つの方法となりえます。ただし、一括贈与や生活費以外の目的で預金・資産購入に充てた場合、贈与税の課税対象となる可能性があります。また、遺言書による持ち戻し免除の意思表示は、生前贈与加算期間の延長など税制改正も進んでおり、その効果については専門家への確認が推奨されます。

専門家に相談するなら知っておきたい3つのポイント

相続問題を専門家に相談する際は、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。
事務所を選ぶ際には、単に専門知識があるだけでなく、相談者の立場に立って親身に対応してくれるかどうかを見極める必要があります。
ここでは、専門家選びで失敗しないために確認しておきたい3つのポイントを紹介します。

回数や時間に制限なく無料で相談できるか

相続問題は複雑で、一度の相談だけではすべてを理解・解決できないことも少なくありません。
そのため、相談料を気にすることなく、納得できるまで相談できる事務所を選ぶことが重要です。
初回無料相談や一定時間の無料相談を提供している事務所もあるため、費用体系を事前に確認し、自身の状況に合わせて焦らずにじっくりと相談できる体制が整っているかを確認しましょう。

これにより、自身の状況を伝え、解決策を見つけることができます。
当センターの無料相談については「何度でも何時間でも無料相談」で詳しく紹介しています。

土日祝日など、都合の良い時間に対応してくれるか

相続手続きについて相談したくても、平日の日中は仕事で時間が取れないという方は多いでしょう。
そのため、土日祝日や平日の夜間など、自分の都合の良い時間帯に相談の予約が取れるかどうかは重要なポイントです。
相談者のライフスタイルに合わせて柔軟に対応してくれる事務所は、利用者への配慮が行き届いていると判断できます。

契約を急かさず、明確な見積もりを提示してくれるか

信頼できる専門家は、相談者の不安な気持ちに付け込んで契約を急かすようなことはしません。
相談内容を丁寧にヒアリングした上で、どのような手続きが必要で、費用がいくらかかるのかを明確に見積もりとして提示してくれます。
その場での決断を迫らず、一度持ち帰って検討する時間を与えてくれる事務所を選びましょう。

まとめ

相続で生活費に困る原因は、口座凍結や相続人間のトラブル、生前の金銭のやり取りなど様々です。
しかし、預貯金の仮払い制度や配偶者居住権といった法的な救済措置や、使い込みへの対処法、特別受益に関する知識を持つことで、多くの問題は解決の糸口を見つけることができます。

相続に関する悩みは、一人で抱え込まずに、早期の段階で専門家へ相談することが円満な遺産分割につながります。
まずは無料相談などを活用し、自身の財産状況や権利について正確に把握することから始めましょう。

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