遺言書をまず確認!相続時の探し方から見つけた後の検認まで解説
相続が発生した際、まず最初に取り組むべきことは遺言書の有無を確認することです。
遺言書の探し方にはいくつかの方法があり、見つけた後も種類によって手続きが異なります。
特に自筆で書かれた遺言書は、家庭裁判所での検認という手続きが必要になるケースがあります。
この一連の流れを正しく理解し、適切な手順で進めることが、円滑な相続手続きの第一歩となります。

相続手続きの第一歩は遺言書の有無を確認することから
相続が開始されたら、何よりも先に故人が遺言書を残しているかどうかの確認が必要です。
遺言書の存在は、遺産の分割方法を決定するうえで最も優先されるため、その有無によって後の手続きが大きく変わります。
もし遺言書があるにもかかわらず、その存在を知らずに相続人同士で遺産分割の話し合いを進めてしまうと、後からすべてが無効になる可能性があります。
そのため、あらゆる手続きに先立って遺言書の確認が最優先事項となります。
遺言書を無視して遺産分割協議を進めると無効になるリスクがある
遺言書の存在を確認せずに遺産分割協議を進め、相続人全員で合意に至ったとしても、その後に遺言書が発見された場合、原則としてその遺産分割協議は無効となります。
民法では、被相続人の最終的な意思である遺言が、相続人間の合意よりも優先されると定められているためです。
これにより、時間と労力をかけてまとめた話し合いがすべて白紙に戻り、遺言書の内容に沿って手続きをやり直す必要が生じます。
このような二度手間や相続人間のトラブルを避けるためにも、協議を始める前に遺言書がないかを徹底的に調べることが不可欠です。
ただし、相続人全員が遺言書の存在を知ったうえで、全員が合意して遺言とは異なる分割を行うことは可能です。
【種類別】遺言書の探し方を具体的に解説
遺言書には、公証人が作成に関与する「公正証書遺言」と、故人が自筆で作成する「自筆証書遺言」が主にあり、それぞれで探し方が異なります。
公正証書遺言は公的機関に記録が残っていますが、自筆証書遺言は保管場所が多岐にわたるため、探し出すには複数の可能性を考慮する必要があります。
故人がどちらの形式で遺言を残したか不明な場合でも、両方の可能性を視野に入れて探す方法が確実です。
公正証書遺言の探し方:公証役場の遺言検索システムを利用する
公正証書遺言は、全国の公証役場で作成された記録が一元管理されています。
そのため、相続人などの利害関係者は、最寄りの公証役場で「遺言検索システム」を利用して遺言書の有無を照会できます。
照会手続きには、故人が亡くなったことがわかる戸籍謄本(除籍謄本)、請求者が相続人であることがわかる戸籍謄本、そして請求者の本人確認書類(運転免許証など)と印鑑が必要です。
昭和64年1月1日以降に作成されたものであれば、全国どこの公証役場からでも検索が可能です。
もし遺言書が見つかれば、作成した公証役場で謄本の交付を請求し、内容を確認できます。
自筆証書遺言の探し方①:自宅内の一般的な保管場所を捜索する
自筆証書遺言は、故人が自宅内で大切に保管しているケースが多く見られます。
まずは、故人が生前よく利用していた場所や、貴重品をしまっていた場所を中心に捜索します。
具体的には、仏壇の引き出し、金庫、タンス、机の鍵付きの引き出し、書斎の本棚などが考えられます。
また、通帳や印鑑、権利証といった重要書類と一緒に保管している可能性も高いでしょう。
故人が利用していた金融機関の貸金庫に預けている場合もあるため、心当たりがあれば金融機関に問い合わせることも必要です。
捜索の際は、誤って遺言書を破棄してしまわないよう、慎重に確認することが求められます。
自筆証書遺言の探し方②:法務局の保管制度を利用していないか照会する
2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用して、遺言書が法務局に預けられている可能性があります。
この制度の利用の有無は、相続人が全国の法務局(遺言書保管所)で照会することができます。
「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行うことで、故人が遺言書を預けているかどうかを確認可能です。
請求には、故人の死亡が記載された戸籍謄本、請求者の戸籍謄本、本人確認書類などが必要となります。
もし遺言書が保管されていれば、「遺言書情報証明書」の交付を請求することで、その内容を確認し、後の相続手続きに使用できます。

注意:遺言書を発見した後に”絶対にしてはいけない”ポイント
遺言書を見つけた場合、安堵からすぐに中身を確認したくなるかもしれません。
しかし、発見した遺言書の種類や状態によっては、法的に定められた手続きを踏まずに開封することが禁じられています。
特に封印されている自筆証書遺言を勝手に開けてしまうと、法的な罰則の対象となる可能性があります。
遺言書が見つかった後は、その後の手続きを正しく理解し、慎重に行動することが極めて重要です。
封印のある遺言書は家庭裁判所以外で開封してはならない
封筒に入れられ、糊付けや押印などで封印されている自筆証書遺言を発見した場合、絶対にその場で開封してはいけません。
法律により、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人もしくはその代理人の立会いのもとでなければ開封できないと定められています。
この手続きを「検認」と呼びます。
もし勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料が科される可能性があります。
遺言書の内容自体は無効になりませんが、他の相続人から偽造や変造を疑われる原因にもなりかねません。
そのため、封印された遺言書を見つけた際は、そのままの状態で家庭裁判所に提出し、正規の手続きを踏む必要があります。
遺言書が見つかった後の手続きと流れ
遺言書が見つかった後の手続きは、その遺言書の種類によって大きく異なります。
自宅などで発見された自筆証書遺言の場合、原則として家庭裁判所での「検認」という手続きを経なければなりません。
検認とは、遺言書の存在と状態を公的に確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。
一方で、公正証書遺言や法務局で保管されていた自筆証書遺言については、公的な証明力が高いため検認は不要となり、速やかに相続手続きに進むことができます。
自筆証書遺言の場合:家庭裁判所での「検認」手続きが必要
自宅や貸金庫などで保管されていた自筆証書遺言は、発見後に家庭裁判所で「検認」の手続きを受ける必要があります。
検認とは、遺言書がどのような状態で発見されたかを裁判所が確認し、その後の偽造や変造を防ぐための保全手続きです。
重要なのは、検認が遺言の内容の有効・無効を判断するものではないという点です。
検認手続きが完了すると、「検認済証明書」が発行され、この証明書を添付することで、預貯金の解約や不動産の名義変更といった具体的な相続手続きを進められるようになります。
遺言書検認の申立て方法と必要になる書類一覧
遺言書の検認申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
申立てができるのは、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人です。
申立てには、申立書のほか、複数の添付書類が必要となります。
一般的に要求されるのは、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、そして遺言書の原本です。
このほか、申立て手数料としての収入印紙800円分と、裁判所からの連絡に使用する郵便切手も準備します。
必要書類は事案によって異なる場合があるため、事前に申立先の家庭裁判所に確認するとよいでしょう。
検認期日当日の流れと手続き完了までの期間
検認の申立て後、約1ヶ月から2ヶ月程度で家庭裁判所から相続人全員に対し「検認期日」の通知が郵送されます。
当日は、申立人が遺言書を持参して家庭裁判所に出頭します。
他の相続人は出頭義務はなく、欠席しても手続きは進行します。
期日では、裁判官や書記官、出席した相続人の前で遺言書が開封され、形状や内容が確認されます。
手続き自体は15分から30分程度で終了することがほとんどです。
手続き完了後、別途「検認済証明書」の交付申請を行い、収入印紙150円を納付することで証明書が発行されます。
申立てから証明書取得まで、全体で1ヶ月半から2ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。
公正証書遺言の場合:検認は不要ですぐに相続手続きを開始できる
公正証書遺言は、公証人が作成に関与し、その原本が公証役場に厳重に保管されるため、偽造や変造のリスクが極めて低いとされています。
そのため、家庭裁判所による検認手続きは一切不要です。
相続人は、公証役場で発行された遺言書の正本または謄本を用いて、速やかに相続手続きを開始することができます。
例えば、預貯金の解約や払い戻し、株式の名義変更、不動産の所有権移転登記など、検認済証明書を必要とする手続きを待つことなく進められる点が大きな利点です。
これにより、相続人の負担が軽減され、円滑な財産承継が可能となります。

法務局で保管されていた自筆証書遺言の場合:検認は不要
「自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局に預けられていた遺言書についても、家庭裁判所での検認は不要です。
この制度では、遺言者が遺言書を預ける際に、法務局が日付や署名といった形式的な要件を確認します。
また、原本が法務局でデータ化され厳重に保管されるため、偽造や紛失のリスクがありません。
そのため、公正証書遺言と同様に、検認手続きを経ることなく相続手続きに使用できます。
相続人は、法務局で「遺言書情報証明書」の交付を受けることで、この証明書が検認済証明書の代わりとなり、金融機関での手続きや不動産登記などを進めることが可能です。
遺言書がどうしても見つからなかった場合の対応方法
公証役場への照会や自宅の捜索など、あらゆる方法を試しても遺言書が見つからなかった、あるいは遺言書の存在がわからない場合は、法的に「遺言書は存在しない」ものとして手続きを進めることになります。
この場合、相続財産の分け方は、法律で定められた相続人(法定相続人)全員の話し合いによって決定されます。
この話し合いが「遺産分割協議」であり、相続手続きの次のステップへと移行します。
相続人全員で遺産分割協議をおこない財産を分ける
遺言書が存在しないことが確定した場合、法定相続人全員で遺産の分割方法について話し合う「遺産分割協議」を行います。
この協議には、相続人全員の参加が必須であり、一人でも欠けていると協議は無効となります。
協議では、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するのかを自由に決めることができますが、全員の合意が必要です。
話し合いがまとまったら、その合意内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名と実印の押印をします。
この遺産分割協議書と印鑑証明書が、預貯金の解約や不動産の名義変更といった、その後の具体的な相続手続きで不可欠な書類となります。

遺言書の確認に関するよくある質問
遺言書の確認やその後の手続きを進めるにあたり、さまざまな疑問が生じることがあります。
例えば、法律で定められた手続きを怠った場合の罰則や、遺言書の内容に不満がある場合の対処法など、具体的なケースを想定した質問が寄せられます。
ここでは、そうした遺言書の確認に関連するよくある質問について、簡潔に回答します。
Q. 遺言書の検認をしないと、どのような罰則がありますか?
検認が必要な遺言書の手続きを怠ったり、封印のある遺言書を家庭裁判所以外で開封したりすると、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。
ただし、これは行政上の罰則であり、刑罰ではありません。
また、検認をしなかったからといって遺言書自体が無効になるわけではありませんが、検認済証明書がなければ不動産の名義変更などの相続手続きを進めることができません。
Q. 遺言書の内容に納得できません。必ず従う必要がありますか?
遺言書は故人の最終意思として尊重されるため、原則としてその内容に従う必要があります。
相続人全員が遺言書の内容を把握したうえで、全員が合意すれば、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議を成立させることも可能です。
また、兄弟姉妹以外の法定相続人には最低限の遺産取得分を保障する「遺留分」という権利があり、遺言によってこの権利が侵害された場合は、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
なお、遺言書が2通以上見つかった場合は、日付が最も新しいものが有効となります。
Q. 自分に不利な内容が書かれた遺言書を隠しても問題ないですか?
自分に不利な内容だからといって遺言書を隠したり、破棄したり、書き換えたりする行為は絶対にしてはいけません。
このような行為は、民法で定められた「相続欠格」事由に該当し、発覚した場合は相続権を完全に失うことになります。
たとえ生前の貢献が考慮されていないなど、内容に不満があったとしても、不正な手段に訴えることは許されません。
遺言書の存在が明らかになった以上は、法的な手続きに則って誠実に対応する必要があります。
まとめ
相続が開始したら、まず遺言書の有無を確認することがすべての手続きの基礎となります。
遺言書には公正証書遺言と自筆証書遺言があり、それぞれ探し方や発見後の手続きが異なります。
公正証書遺言は公証役場で、自筆証書遺言は自宅内や法務局の保管制度を確認します。
特に、自宅などで発見された封印のある自筆証書遺言は、勝手に開封せず家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
これらの正しい手順を踏むことが、後のトラブルを避け、円滑な相続を実現するために不可欠です。
まとめ
相続発生後に何もせず放置することは、意図せず多額の借金を背負うなど、多くのリスクを伴います。
相続放棄の期限は原則3ヶ月ですが、借金の存在を後から知った場合など、正当な理由があれば期限後でも手続きが認められる可能性があります。
また、故人の子など相続人であっても、遺産分割協議で財産を受け取らないと決めるだけでは法的な放棄にはなりません。
相続放棄をした後も、管理していた家などの財産については一定の責任が残る場合があります。
自身の状況を正確に把握し、必要であれば速やかに専門家へ相談することが問題解決につながります。


