
銀行の相続手続きとは、亡くなった方(被相続人)名義の預金口座を、相続人が解約または名義変更するために行う一連の作業のことです。
この手続きには、被相続人の死亡を証明する書類や、誰が正当な相続人であるかを証明する戸籍謄本など、様々な書類が必要となります。
状況によって必要書類が異なるため、事前に全体の流れと自分のケースを把握しておくことが重要です。
銀行の相続手続きは4ステップ!全体の流れを解説

銀行の相続の手続きは、一般的に4つのステップで進められます。
まず、口座名義人が亡くなったことを銀行へ連絡し、口座を凍結します。
次に、遺言書の有無など、自身の状況に応じた必要書類を収集します。
書類が揃ったら、銀行の窓口か郵送で提出し、最後に銀行側での確認を経て、預貯金の払い戻しや名義変更が実行されるという流れになります。
ステップ1:金融機関へ被相続人の死亡を連絡する
相続が発生したら、まず被相続人が口座を持っていた金融機関の窓口や電話で死亡した旨を連絡します。
連絡を受けると、銀行はその口座からの不正な引き出しを防ぐため、口座を凍結します。
この時点から、入出金や自動引き落としなどがすべて停止されます。
連絡の際には、被相続人の氏名、生年月日、口座の支店名や口座番号を伝えるとスムーズです。
ステップ2:状況に応じた必要書類を収集する
金融機関への連絡後、相続手続き依頼書などの書類が送られてくるため、それに従って必要書類の収集を開始します。
必要となる書類は、遺言書の有無や遺産分割協議を行うかなど、相続の状況によって大きく異なります。
最も時間と手間がかかるステップであり、特に戸籍謄本などは本籍地の役所で取得する必要があるため、計画的に進めることが大切です。
ステップ3:銀行の窓口または郵送で書類を提出する
必要な書類がすべて揃ったら、銀行所定の相続手続き依頼書に必要事項を記入し、他の書類とともに提出します。
提出方法は、銀行の窓口へ直接持参する方法と、郵送で提出する方法があります。
窓口で提出する場合は、その場で書類の不備がないかチェックしてもらえるメリットがあります。
提出前には、すべての書類が揃っているか、記入漏れや捺印漏れがないかを再度確認しましょう。
ステップ4:預貯金の払い戻しまたは名義変更が実行される
提出された書類を銀行が確認し、不備がなければ手続きが実行されます。
通常、書類提出から2週間〜1ヶ月程度で、指定した相続人の口座へ預金の払い戻し(振り込み)が行われるか、口座の名義変更が完了します。
これで一連の銀行の相続手続きは完了となります。
名義変更の場合は、新しい通帳が発行されます。
【状況別】銀行の相続手続きで必要な書類一覧

銀行の相続手続きで求められる書類は、相続の具体的な状況によって異なります。
主に「遺言書があるか」「遺産分割協議書があるか」によって3つのケースに大別されます。
ご自身の状況がどれに当てはまるかを確認し、それに合った書類を準備することが、手続きを円滑に進めるための鍵となります。
ケース1:遺言書に基づいて手続きする場合の必要書類
遺言書がある場合、その内容に従って手続きを進めます。
主な必要書類は、遺言書(自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認済証明書が必要)、被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本、お金を受け取る方(受遺者)の印鑑証明書と実印です。
また、遺言執行者が指定されている場合は、その方の印鑑証明書と実印も必要になります。
金融機関所定の依頼書も忘れずに用意しましょう。
ケース2:遺産分割協議書を使って手続きする場合の必要書類
遺言書がなく、相続人間で遺産の分け方を話し合って決めた場合は、遺産分割協議書を作成して相続手続きを行います。
この場合、遺産分割協議書(相続人全員の実印を捺印)、被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書が必要となります。
誰がどの財産を相続するかが明確になるため、スムーズに手続きが進められます。
ケース3:法定相続人全員で手続きする場合の必要書類(遺言書・遺産分割協議書なし)
遺言書も遺産分割協議書もない場合は、法定相続人全員の同意のもとで相続手続きを進めることになります。
このケースでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本および印鑑証明書が必要です。
さらに、金融機関が用意する所定の依頼書に、法定相続人全員が署名し、実印を捺印する必要があります。
手続きをスムーズに進めるための重要書類の取得方法と注意点
相続の手続きを効率的に進めるには、必要書類の取得方法や注意点を事前に理解しておくことが重要になります。
特に戸籍謄本や印鑑証明書は、取得に時間がかかったり、有効期限が定められていたりするため、計画的な準備が求められます。
また、複数の金融機関で手続きする際に便利な制度も存在します。
被相続人の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本が必要な理由
銀行の相続手続きでは、被相続人の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)が求められます。
これは、相続人が誰であるかを法的に確定させるために不可欠な書類だからです。
結婚や転籍などで戸籍は複数作成されるため、すべての謄本を遡って取得することで、他に相続人がいないことを銀行側が確認します。
印鑑証明書に有効期限はある?発行から3ヶ月または6ヶ月以内が一般的
相続手続きで使用する印鑑証明書には、金融機関が独自に有効期限を設けている場合がほとんどです。
一般的には「発行から3ヶ月以内」または「発行から6ヶ月以内」と定められています。
期限を過ぎたものは受け付けてもらえないため、書類を提出する直前のタイミングで取得するのが確実です。
複数の金融機関で手続きする場合は、各機関の規定を事前に確認しておくとよいでしょう。
複数銀行での手続きに便利!「法定相続情報一覧図」の活用法
「法定相続情報一覧図」とは、被相続人と相続人の関係を一覧で示した公的な証明書です。
法務局に戸籍謄本一式を提出して申請すると、無料で交付されます。
この一覧図のコピーを提出すれば、多くの金融機関で戸籍謄本一式の提出が不要になります。
複数の銀行で手続きをする際に、戸籍の束を何度も用意する手間が省け、非常に便利です。
提出した戸籍謄本は返却可能?原本還付の依頼方法
戸籍謄本や遺産分割協議書などの原本は、手続き完了後に返却してもらうことが可能です。
これを「原本還付」といいます。
複数の金融機関や法務局での手続きに同じ書類を使いたい場合に便利です。
原本還付を希望する場合は、書類を提出する際に窓口担当者へ「原本還付をお願いします」と明確に伝えましょう。
銀行側でコピーを取った後、原本を返却してくれます。
遺産分割や相続税申告に必要な「残高証明書」の取得手順

残高証明書とは、被相続人が亡くなった日(相続開始日)時点での預金残高を証明する公式な書類です。
遺産分割協議で相続財産を正確に把握するためや、相続税の申告が必要な場合に添付書類として求められます。
取得するには、被相続人の戸籍謄本や請求者(相続人)の身分証明書、印鑑などを用意し、金融機関の窓口で発行を依頼します。
発行には1〜2週間程度かかることがあります。
相続手続きを放置するリスク!いつまでに手続きすべきか

銀行預金の相続手続きには法律上の明確な期限はありませんが、長期間放置すると様々なリスクが生じます。
他の相続人の状況が変わったり、必要書類の取得が困難になったりする可能性があります。
また、相続税の申告期限など、関連する手続きには期限があるため、なるべく早く着手することが望ましいです。
相続税の申告期限(10ヶ月)に注意が必要
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要です。
この申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と定められています。
申告には預金残高を正確に把握する必要があるため、相続の手続きや残高証明書の取得は、この期限に間に合うように余裕を持って進めなければなりません。
長期間放置すると休眠預金として扱われる可能性も
最後の取引から10年以上が経過し、入出金などの動きがない預金は「休眠預金」として扱われる可能性があります。
休眠預金になると、預金保険機構に移管され、社会貢献活動などに活用されます。
移管後も相続人であれば引き出すことは可能ですが、通常の相続手続きよりも時間や手間がかかる場合があるため、早めに手続きを済ませるのが賢明です。
書類集めや手続きが難しい場合に専門家へ依頼する選択肢
戸籍謄本の収集が複雑であったり、相続人が多かったり、仕事で時間が取れなかったりする場合、手続きを専門家に依頼することも有効な選択肢です。
司法書士は不動産の名義変更を含めた相続手続き全般を、行政書士は遺産分割協議書の作成や預貯金の解約手続きを代行できます。
また、相続税が関わる場合は税理士、相続人間で争いがある場合は弁護士に相談するとよいでしょう。
銀行 相続 手続き 必要書類に関するよくある質問
ここでは、銀行の相続手続きや必要書類に関して、多くの方が疑問に思う点について回答します。
複数の銀行で手続きする場合、戸籍謄本はその都度必要ですか?
「法定相続情報一覧図」の写しを活用すれば、戸籍謄本一式の提出は不要になる場合が多いです。
また、金融機関に原本還付を依頼すれば、提出した戸籍謄本を返却してもらえます。
これらの方法を使えば、戸籍謄本一式を何通も取得する手間と費用を省けます。
口座が凍結される前に預金を引き出しても問題ありませんか?
原則として避けるべきです。
他の相続人とのトラブルに発展する可能性があります。
また、相続財産の一部を処分したとみなされ、借金などマイナスの財産も含めてすべてを相続する「単純承認」が成立し、相続放棄ができなくなるリスクがあります。
葬儀費用など緊急の場合は、仮払い制度を利用しましょう。
銀行に書類を提出してから払い戻しまでどのくらいかかりますか?
書類に不備がなければ、通常2週間から1ヶ月程度で手続きが完了します。
ただし、相続関係が複雑な場合や、金融機関の繁忙期などは、これより長くかかることもあります。
具体的な期間については、書類を提出する金融機関に直接問い合わせるのが最も確実です。
まとめ
銀行の相続手続きをスムーズに進めるためには、まず全体の流れを把握し、遺言書の有無など自分の状況に応じた必要書類を正確に確認することが不可欠です。
戸籍謄本の収集には時間がかかる場合があるため、早めに着手することをおすすめします。
「法定相続情報一覧図」の活用や専門家への依頼も視野に入れ、計画的に手続きを進めましょう。



