
相続放棄の手続きを自分で行うには、決められた書類を家庭裁判所に提出する必要があります。
必要書類は、亡くなった方(被相続人)との関係性によって異なり、ご自身の立場が子・兄弟・孫のいずれであるかによって追加で揃えるものが変わります。
この記事では、全相続人に共通で必要な書類の一覧から、続柄別の追加書類まで、チェックリスト形式で分かりやすく解説します。

【全相続人共通】相続放棄手続きで必ず提出が必要な書類一覧
相続放棄の手続きにおいて、申述人の立場にかかわらず、共通して提出が必要となる基本的な書類があります。具体的には、「相続放棄の申述書」「被相続人の住民票除票または戸籍附票の除票」「被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本」「申述人の戸籍謄本」などが挙げられます。申述書は裁判所のウェブサイトで書式を入手し、その他の書類は市区町村役場などで取得できます。
まずは、これらの基本となる書類を準備することから始めましょう。
【続柄別】相続放棄の追加書類チェックリスト

相続放棄では、基本の3点セットに加え、被相続人と申述人の関係性を証明するための追加書類が必要です。
誰が相続放棄をするかによって、集めるべき戸籍謄本などの範囲が変わります。
相続順位に関するルールを正しく理解し、自分のケースではどの書類が追加で必要になるのかを正確に把握することが、手続きをスムーズに進めるための鍵となります。
【第1順位】子または孫(代襲相続人)が相続放棄する場合
相続順位が第一順位にあたる、被相続人の子が相続放棄をする場合、追加で「被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本」が必要です。
また、子がすでに亡くなっており、その子供である孫が代襲相続人として相続放棄をする場合は、上記に加えて「被代襲者(亡くなった子)の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本」も提出します。
これにより、被相続人と申述人である子や孫の親子関係や代襲関係を証明します。
【第2順位】親または祖父母(直系尊属)が相続放棄する場合
第2順位の相続人である親や祖父母などの直系尊属が相続放棄を行うには、より多くの戸籍謄本が必要になります。
これは、先順位である子や孫が誰もいないことを証明するためです。
具体的には、「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」と、「亡くなっている子や孫がいる場合は、その方の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」を揃えます。
これにより、相続権が第二順位の親の世代に移っていることを示します。
祖父や祖母が手続きする場合も同様です。
【第3順位】兄弟姉妹または甥・姪(代襲相続人)が相続放棄する場合
第3順位の相続人である兄弟姉妹、またはその代襲相続人である甥・姪が相続放棄をする場合、最も多くの戸籍謄本が必要となります。
これは、第1順位と第2順位の相続人が存在しないことを証明する必要があるためです。
具体的には、「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」、「亡くなっている子や孫がいる場合は、その方の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」、「直系尊属(親や祖父母)の死亡の記載のある戸籍謄本」を揃えます。
これにより、先順位の相続人がいないため、第三順位の兄弟姉妹や甥姪に相続権が回ってきたことを明らかにします。
どこで取得できる?相続放棄の必要書類の入手先と取得方法
相続放棄の必要書類は、主に「市区町村役場」と「裁判所のウェブサイト」の2か所で入手します。
戸籍謄本や住民票の除票などは、被相続人やご自身の本籍地・住所地の市区町村役場で取得可能です。
遠方の場合は、郵送での取り寄せにも対応しています。
一方で、手続きの核となる相続放棄申述書は、家庭裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードして使用するのが一般的です。
戸籍謄本・住民票の除票などは市区町村役場で取得
相続放棄に必要な戸籍謄本、住民票の除票、戸籍の附票といった公的書類は、対象者の本籍地または最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得します。
市役所や区役所の窓口で申請するほか、郵送での請求も可能です。
被相続人が転籍を繰り返している場合、すべての戸籍を遡って取得する必要があるため、複数の役所へ請求手続きが必要になることもあります。
なお、死亡届を提出しただけではこれらの書類は発行されず、別途申請が必要です。
相続放棄申述書は裁判所のサイトからダウンロード
相続放棄の申述書は、手続きを行う家庭裁判所の窓口でもらうこともできますが、裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードして印刷するのが最も手軽な方法です。
ウェブサイトには、申述書(成人用・未成年者用)のPDFファイルやWordファイル、記載例が用意されています。
これらを参考にしながら、必要な情報を正確に記入して作成します。
書式は全国共通のため、どの裁判所のサイトからダウンロードしても問題ありません。
相続放棄手続きにかかる費用の内訳を解説

相続放棄の手続きには、いくつかの実費が必要です。
主な費用は、家庭裁判所に納める「収入印紙代」、裁判所とのやり取りに使う「郵便切手代」、そして役所で必要書類を取得するための「発行手数料」の3種類です。
専門家に依頼しない限り、手続きにかかる費用はこの実費のみとなります。
全体の金額を把握するため、それぞれの内訳を理解しておきましょう。
家庭裁判所に支払う収入印紙代
相続放棄の申述を家庭裁判所に行う際、手数料として収入印紙を申述書に貼り付けて納付します。
金額は、相続放棄をする人(申述人)1人につき800円です。
例えば、親子3人がそれぞれ相続放棄を行う場合は、800円×3人分で合計2,400円の収入印紙が必要となります。
収入印紙は、郵便局や法務局、コンビニエンスストアなどで購入できます。
連絡用の郵便切手代
家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出する際には、連絡用の郵便切手も一緒に納める必要があります。
この切手は、裁判所から申述人へ「照会書」や「受理通知書」といった重要書類を送付するために使われます。
必要な切手の種類や金額は、提出先の家庭裁判所によって異なります。
数百円から1,000円程度が一般的ですが、事前に管轄の家庭裁判所のウェブサイトで確認するか、電話で問い合わせて正確な金額を準備しましょう。
戸籍謄本などの書類発行手数料
相続放棄の手続きでは、被相続人や相続人の戸籍謄本などを複数取得する必要があり、その際に発行手数料がかかります。
一般的な手数料の目安は、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本や改製原戸籍謄本が1通750円、住民票の除票や戸籍の附票が1通300円前後です。
取得する通数が多くなるほど合計金額も増えるため、全体の費用を見積もる際にはこの手数料も考慮に入れる必要があります。
書類集めから提出まで!相続放棄手続きの4ステップ
相続放棄の手続きは、書類を収集し、申述書を作成して家庭裁判所に提出するという流れで進みます。
この手続を自分で行う場合、大きく4つのステップに分けられます。
まず必要書類を漏れなく集め、次に申述書を正確に作成します。
そして、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が提出先となるため、管轄を確認して書類一式を提出。
最後に、裁判所からの照会書に回答し、受理通知書を受け取れば手続きは完了です。
各ステップを着実に進めることが、スムーズな相続放棄の実現につながります。
相続放棄の期限は3ヶ月!起算日と注意点を解説

相続放棄には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という期限(熟慮期間)が設けられています。この「知った時」というのが起算日となり、多くの場合、被相続人が亡くなった日や、自分が相続人であることを知った日が該当します。この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は認められなくなりますが、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間の延長が認められる場合もあります。相続財産の調査に時間がかかる場合などが、延長が認められる理由として挙げられます。
書類集めに時間がかかることもあるため、期限を意識して早めに手続きに着手することが重要です。
期限内に書類が揃わない場合の2つの対処法
相続放棄の3ヶ月という期限内に、戸籍謄本などの必要書類がすべて揃わないケースも少なくありません。
特に、被相続人が何度も転籍していたり、相続関係が複雑だったりすると、書類集めに想定以上の時間がかかることがあります。
しかし、そのような場合でも諦める必要はなく、適切な対処法を取ることで手続きを進めることが可能です。
主に2つの方法が考えられます。
対処法1:家庭裁判所に事情を説明し、先に申述書を提出する
3ヶ月の期限が迫っているにもかかわらず、一部の戸籍謄本などが揃わない場合、まずは管轄の家庭裁判所に電話で事情を説明しましょう。
裁判所の許可を得られれば、先に相続放棄の申述書と、その時点で揃っている書類だけでも受け付けてもらえることがあります。
その場合、不足書類は後日追完(追加で提出)することになります。
ただし、この対応は裁判所の判断によるため、必ず事前に申立先の裁判所に確認してから申述の手続きを進めることが不可欠です。
対処法2:相続放棄の期間伸長の申し立てを行う
相続財産の調査に時間がかかり、3ヶ月以内に相続を承認するか放棄するかを判断できないといった正当な理由がある場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることができます。
この申立てが認められれば、熟慮期間を延長してもらえます。
この手続きは、3ヶ月の期限が経過する前に行う必要があります。
申立てに必要なものとして、申立書や事情を説明する資料などを準備します。
相続放棄の必要書類に関するよくある質問
相続放棄の手続きを進めるにあたり、必要書類の準備や期限に関してさまざまな疑問が生じることがあります。
例えば、「期限を過ぎてしまったらどうなるのか」「複数の相続人で書類は共有できるのか」といった質問は頻繁に寄せられます。
ここでは、借金などのマイナスの遺産を相続しないために、多くの方が抱える書類に関する疑問点について解説します。
相続放棄の3ヶ月の期限を過ぎてしまったら、もう手続きはできませんか?
原則として手続きはできませんが、期限が過ぎた後でも相続放棄が認められる例外的なケースがあります。
例えば、被相続人に多額の借金があることを知らなかったなど、期限内に判断できなかったことに正当な理由がある場合です。
その際は、家庭裁判所からの照会書に対して、期限を過ぎた理由を詳細に説明する必要があります。
この照会への回答内容次第で、申述が受理される可能性があります。
兄弟など複数の相続人が同時に相続放棄する場合、戸籍謄本は1通で足りますか?
はい、重複する書類は1通で足ります。
例えば、被相続人の戸籍謄本など、複数の相続人が共通して提出する必要がある書類は、誰か1人が原本を提出すれば、他の家族はそのコピーを提出することで手続きが可能です。
ただし、相続放棄の申述書や、申述人自身の戸籍謄本など、各人が個別に用意すべき書類の省略はできません。
妻や子など、同時に申述する人がいる場合は、事前に裁判所に確認するとスムーズです。
書類集めが複雑です。司法書士などの専門家に依頼した方が良いケースはありますか?
はい、戸籍集めが困難な場合や期限が迫っている場合は、司法書士や弁護士への依頼が有効です。
特に、相続人の数が多かったり、被相続人が何度も転籍して戸籍が全国に散らばっていたりするケースでは、収集に多大な時間と手間がかかります。
また、3ヶ月の期限が間近に迫っている場合も、専門家に依頼することで迅速かつ確実に手続きを進めることが可能です。
まとめ
相続放棄を完了させるには、申述人と被相続人の関係を証明する戸籍謄本などを正確に収集し、期限内に家庭裁判所へ提出することが不可欠です。
必要書類は続柄によって異なり、特に先順位の相続人がいないことを証明する場面では、多くの戸籍が必要になります。
書類は郵送で取り寄せられますが、時間がかかるため早めに着手しましょう。
申述書には認印または実印での押印が必要ですが、印鑑証明書の添付は不要です。
手続きに不安がある場合や、相続権の所在が複雑な場合は、専門家への相談も検討するのが良いでしょう。


