
遺留分の放棄は、メリットとデメリットがあります。
人によっては家族関係を良好に保つこともあれば、後悔につながることもあります。
冷静に見極めることが大切です。
この記事では、遺留分の放棄 をわかりやすく整理しながら、どんな場面で放棄が選択肢になるのかを説明していきます。
1. 遺留分の放棄とは?生前と死後で意味が違う

遺留分の放棄には、実は2つの種類があります。
- ① 生前に家庭裁判所の許可を得て放棄する方法
- ② 相続発生後に、結果として「請求しない」ことを選ぶ方法
まず、この2つは意味が大きく違います。
■ 生前に放棄する場合
- 家庭裁判所に申立てが必要
- 本人の意思が本当に自由かどうか審査される
- 許可が下りると、将来どんな事情が起きても基本的に撤回できない
■ 相続発生後に請求しない場合
- 家庭裁判所の許可は不要
- “放棄”というより「権利を行使しない」という扱い
- 遺留分権者の自由で、いつでも判断できる
- ただし、一度合意書にサインすると撤回は困難
この違いを知らずに話を進めると、大きなトラブルにつながります。
遺留分の基本を確認したい方はこちらが参考になります。

2. 遺留分放棄のメリット

遺留分放棄には、次のようなメリットがあります。
■ ① 事業承継がスムーズになる
会社経営者の家庭では「後継ぎだけに株式を集中させたい」という事情がよくあります。
遺留分があると株が分散してしまうため、放棄は大きな助けになります。
■ ② 生前贈与や遺言の内容に口出ししなくて済む
「自分はすでに十分援助を受けている」
「ほかの兄弟を優先してほしい」
このような理由から、遺留分を放棄して角を立てないようにする場面もあります。
■ ③ 将来の争いを避けられる
相続人同士の人間関係が悪い場合、遺留分が火種になることがあります。
あらかじめ放棄しておくことで、争いの芽を減らす効果があります。
■ ④ 財産の分配方針を明確にしやすい
遺留分が絡まない分、親が望む遺言の内容を自由に決めやすくなります。
3. 遺留分放棄のデメリット

メリットだけを見ると良い制度に見えますが、デメリットはかなり重いです。
■ ① 一度放棄すると原則取り消せない
家庭裁判所が許可した生前放棄は、ほぼ撤回が不可能です。
状況が変わったからといって、権利を取り戻すことはできません。
■ ② 親の財産事情を十分知らないまま判断してしまう危険
- 親の借金
- 保証人としてのリスク
- 誰にどれくらい贈与しているか
こうした情報を知らないまま放棄すると、後で不公平を感じてもどうしようもありません。
■ ③ 他の相続人から心理的な圧力がかかることがある
「家族のために放棄してよ」
「揉めたくないでしょ」
と、半ば強引に迫られる例も珍しくありません。
■ ④ 親の死後に「やっぱり請求したい」と思っても遅い
生前放棄の許可を取っていた場合、どれほど状況が変わっても権利は戻りません。
遺留分放棄は軽い判断で選ぶべきではありません。
そのため、裁判所は申立てを慎重に審査します。
遺留分放棄前に確認したい“割合の仕組み”はこちらで詳しく整理しています。

4. 生前放棄の許可が通りやすい典型パターン

裁判所が許可を出す場面には一定の傾向があります。
- 子どもが後継ぎとして事業を引き継ぐ場合
- 親から不動産や金銭の十分な援助を受けている場合
- 放棄する代わりに何らかの見返りを受けている場合
- 家族間で合意が取れている場合
- 親の明確な意向がある場合(事業承継、配偶者の生活保護など)
逆に、次のような状況では許可が出にくいです。
- 本人が押されて申し込んでいる
- 財産内容をほとんど理解していない
- 不公平が強すぎる
- 親の意向が不明確
審査のポイントは、
「本人が納得しているか」
「不当な圧力がないか」
という部分です。
5. 遺留分を放棄すべきかどうかの判断基準

放棄すべきかどうかは、家族の事情で大きく変わります。
判断の参考になるポイントをまとめます。
■ ① 事業承継が絡むか
経営を守るために、株を集中させる必要がある家庭では、有力な選択肢になります。
■ ② 生前贈与のバランスはどうか
すでに十分優遇されているなら、放棄は合理的な判断になります。
■ ③ 放棄後の生活に影響が出ないか
遺留分は「最低限の取り分」です。
これを失っても家計に影響しないか慎重に判断する必要があります。
■ ④ 他の相続人との関係性はどうか
「放棄すれば関係が改善する」と思われるケースもありますが、逆効果になる場合もあります。
■ ⑤ 将来の変化に耐えられるか
- 病気
- 離職
- 子の教育費
- 親の介護負担
こうした将来予測を含めて考えないと、後悔につながります。
もっと深く検討したい方は、遺留分の全体像もあわせて確認すると判断しやすくなります。
6. 相続発生後に「請求しない」判断を選ぶ場合

相続開始後の“放棄”は、法律上では「遺留分侵害額請求をしない」という扱いになりま
メリットは次の通りです。
- 家庭裁判所の手続きが不要
- 放棄の撤回も基本的に可能(ただし合意書にサインすると撤回しにくい)
- 状況を見ながら柔軟に判断できる
デメリットは次の通りです。
- 話し合いの空気に流されて決めてしまうことがある
- 将来後悔しても戻せないケースが多い
- 時効(1年と10年)が動き続けるため、判断が遅れると権利が消える
時効の詳しい仕組みは、こちらで整理しています。

7. 遺留分放棄をするときに必ず確認すべきこと

放棄の話が出たら、次の点は最低限チェックしておくべきです。
- 親の財産の全体像
- 親の借金・保証人リスク
- 生前贈与の内容
- 遺言書の有無
- 他の相続人の意向
- 自分の生活への影響
- 将来の家族構成の変化(結婚、離婚、再婚など)
これらを知らないまま放棄の話を進めると、後で「こんなはずじゃなかった」と感じることになります。
8. がもう相続相談センターのサポート

遺留分放棄は、相続の中でも特に判断が難しいテーマです。
「家族から頼まれているけど、本当に放棄して大丈夫?」
「裁判所の許可は必要なの?」
「相続が始まってからの“放棄”とどう違うの?」
こういった疑問に対して、がもう相続相談センターでは次のようなサポートを行っています。
- 遺留分放棄が必要かどうかの整理
- 生前放棄と死後の放棄の違いの確認
- 家庭裁判所への申立が必要なケースの説明
- 生前贈与の状況や遺言内容の整理
- 相続人調査、戸籍収集
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 預貯金の名義変更
- 他の専門家(税理士・弁護士)が必要なときの連携
当センターでは、相続相談を 何度でも・何時間でも無料 で受け付けています。
状況を丁寧に整理し、あなたの不安をひとつずつ取り除きながら、最適な判断につながる情報をお伝えします。
