兄弟がいるご家庭では、相続の準備を後回しにすると、ちょっとした誤解から関係が壊れてしまうことがあります。
仲の良い兄弟でも、財産の話が絡むと雰囲気が変わる。そんなケースは珍しくありません。
あなたも、実家の相続が「兄弟で揉めたらどうしよう…」と胸の奥でざわつく瞬間があるのではないでしょうか。
不動産、預金、実家の名義。
兄弟それぞれの暮らし方、距離感、収入、家族事情。
こういった違いが積み重なることで、実は小さな火種がいくつも潜んでいます。
その火種を、今のうちに消しておくための「現実的に使える相続準備」。
1. 兄弟の相続で起こりやすいトラブルを知る
兄弟がいる家庭では、揉めるきっかけが一定のパターンに集まっています。
特別な家庭だけの問題ではなく、どこでも起こり得るものです。
代表的な３つを紹介します。
- 実家を誰が相続するかで対立する
- 親の介護をした兄弟だけが「不公平だ」と感じる
- 遺品整理や不動産売却の手間を巡って不満が出る
どれも「お金」そのものよりも、兄弟それぞれの積み重ねてきた感情が表面化し、こじれるケースが多いです。
例えば、よくあるのは次のような構図です。
長男は地元に残り介護を担当。次男と妹は遠方で手伝えなかった。
親が亡くなったあと、財産の分け方の話になると、長男が「自分が一番やったのに」と強く主張する。
一方で遠方組は「お金だけで測らないで」と反論する。
こうして、不満と誤解が積み重なり、冷静な話し合いができなくなります。
しかし、トラブルは事前の準備でかなり防げます。
兄弟全員の負担を軽くし、平和な関係を守るための対策を次の項目で具体的に整理していきます。
2. 親の財産を「ざっくりでいいので」把握しておく
兄弟トラブルで最も多いのが、「親の財産の全体像を誰も知らない」ことによる混乱です。
実家の不動産がどれくらい価値があるのか。
預金はいくらあるのか。
借金はないか。
この基本的な情報が抜け落ちたまま相続が始まると、兄弟同士で疑心暗鬼になります。
「本当にそれだけ？」「他にも口座あったのでは？」
こういった疑いが火種になります。
財産と言っても、細かい数字まですべて知る必要はありません。
おおまかに以下さえ分かれば、後の負担が激減します。
- 実家以外に不動産があるか
- 預金の数（口座の数で十分）
- 生命保険の有無
- 借金やローンの有無
親に聞くのが難しい場合は、通帳や保険証券の保管場所だけ確認するだけでも十分です。
兄弟が複数いる場合、この「ざっくり把握」が相続準備の第一歩になります。
3. 実家をどうするか「方向性だけでも」決めておく
兄弟がいる相続で最も揉めるのは、実家の扱いです。
不動産は、預金のようにきれいに分けられないからです。
多いトラブルは次の３つです。
- 誰が住むのかで揉める
- 誰が固定資産税を払うか曖昧なまま放置される
- 売却するとしても手続きが進まない
これらが長期化すると、兄弟関係に深刻な亀裂が入ります。
決め方は難しくありません。正解を出す必要はありません。
「方向性」だけでも共有しておけば十分です。
例えば、次のような会話レベルで構いません。
- 売る方向で考えようか
- 誰も住まないなら空き家にするより売ったほうがいいかもね
- 地元に残るのは兄だけだから、兄が住むなら税金はどうする？
方向性だけでも話しておくことで、亡くなった後の兄弟同士の負担が大きく減ります。
4. 親に「遺言書」を書いてもらう（兄弟トラブル予防の最強策）
兄弟が複数いる家庭では、遺言書ほど強力なトラブル予防策はありません。
どんなに仲の良い兄弟でも、「親の意思」が明確に書かれた紙があるだけで争いが一気に減ります。
遺言書があるかないかで、兄弟の心理はまったく変わります。
遺言書がない場合
「本当は誰に何を渡したかったのか？」
「自分は軽く扱われているのでは？」
こうした感情が噴き出しやすくなります。
遺言書がある場合
「親がこう書いてくれてたなら、それでいいよ」
とスムーズになりやすいです。
特に効果が高いのは次のパターンです。
- 実家を誰が継ぐか
- 介護を担当した子への配慮
- 特定の兄弟に渡したいものがある場合
さらに、公証役場で作成する公正証書遺言は、紛失リスクがなく、兄弟間の疑いを最小限にします。
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5. 介護・手続き・費用の「役割分担」を決めておく
兄弟がいる相続で揉める原因のひとつは、負担の偏りです。
特に多いのが次のパターンです。
- 介護を１人がほぼ全部引き受けていた
- 手続きに詳しい兄弟に仕事が集中する
- 遠方の兄弟だけ情報が遅れる
こういったズレは、亡くなった後の遺産の話にまで影響します。
ざっくりと分担を共有するだけでも十分です。
例として、次のようなイメージがあります。
- 長男は近所なので通院の付き添い
- 次男は費用面のサポート
- 妹は書類手続きの管理
負担を見える化するだけで、後から不満が噴き出すのを防げます。
6. 兄弟が遠方同士の場合は「情報の共有方法」を決めておく
兄弟の一方が実家近く、もう一方が遠方に住んでいる場合、連絡不足による誤解が最もトラブルを生みます。
代表的な例は次のとおりです。
- 病院からの説明を一人だけが聞いてしまう
- 介護施設の契約内容を共有しない
- お金の流れを誰も整理していない
これが積み重なると、相続の場面で「聞いてない」「知らされてない」という不信感に変わります。
回避する方法はシンプルです。
- 共有ノートアプリを使う
- LINEグループを作る
- 家計簿アプリで支出を共有する
情報が透明になるだけで、兄弟の関係は驚くほど穏やかになります。
7. 事例：兄弟３人の家庭で起きたトラブルと、それを防げたはずの対策
最後に、実際によくあるケースを紹介します。
兄弟３人。
長男：地元で親の介護を担当
次男：遠方で仕事が忙しい
妹：結婚して別地域で生活
親が亡くなった後、遺産は自宅と預金400万円。
長男は介護の負担を理由に「自宅と預金の半分は自分が欲しい」と主張。
次男と妹は「急にそんなこと言われても困る」と反発。
結果、話し合いは半年以上平行線。
関係が悪化するたびに、遺産の話は遠のくばかり。
ただ、この家庭の場合、次の３つが事前にあれば大きく変わっていました。
- 親の財産の全体像を兄弟で共有していた
- 介護の負担を可視化して、兄弟で役割を話し合っていた
- 遺言書があり、実家を長男に渡す意思が明確だった
準備が少しでも進んでいれば、兄弟の関係はこんなに傷つかなかった可能性が高いです。
まとめ
兄弟がいる家庭の相続は、準備の有無で空気がまったく変わります。
- 親の財産をざっくり把握する
- 実家の扱いを共有する
- 遺言書で親の意思を明確にする
- 役割を見える化する
- 情報共有の仕組みを作る
この５つができている家庭ほど、話し合いは落ち着き、兄弟同士の関係も守られます。
家族が安心して次のステップへ進めるよう、今日できる準備をひとつだけでも進めてみてください。
必要があれば専門家のサポートも使ってください。
兄弟の関係を守りながら相続を進めるには、第三者の力が役に立つことが多いです。
あなたの家族が、揉め事のない穏やかな相続を迎えられるよう願っています。
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